時間は誰にでも24時間平等にあるといわれている。しかしその時間は1秒経ってしまったら決して戻ることはない。そう考えると「時間」は不思議なものである。果たして誰にでも同じようなものなのか、そしてなぜ戻らないのか、そもそも時間はどのような存在なのかという疑問がどんどんと出てくる。
そういった考えは哲学の観点から解き明かしている本はあるものの、科学的に解き明かした本はなかなかない。しかも本書は「14歳のための」と標榜しているだけのことはあり、非常にわかりやすくかみ砕いて説明している。
その1―日曜日のお話「時間のふしぎ」
そもそも私たちの目から入ってくる情報は「今」の情報かというとそうではなく、ほんの一瞬の「過去」を目から入ってきた情報を脳で映像化したものを見ている。「一瞬」といってもものの距離によって異なるのだが、空にある星々の場合は距離が「●光年」と呼ばれており、光年と同じ数の年数前のもの星をみることになる。
現在あなたが見ている情報はほんの一瞬過去の情報だとしたら、現在はどのようにして流れているのか、それはあなたの心の中にあるという。
その2―月曜日のお話「時間を測るとは」
時間は「年」「月」「日(曜日)」「時」「分」「秒」という単位があり、数字化されている。その数字化でもって時間を測ることができるのだが、あくまで「数字化」しているだけのかりそめの姿で、本当のところ「時間」は見えない存在である。
その3―火曜日のお話「なぜ時間はもどらないのか」
もしも現代にタイムマシンがあるとしたら過去の時間に戻ることができるのだが、それ以外の方法で過去の時間に戻ることは「不可能」である。それはいったいなぜなのか、ここでは「粒子」や「空間」「宇宙」の観点から取り上げている。
その4―水曜日のお話「見えない時間、聞こえる時間」
そもそも時間は「見えないもの」と書いたのだが、「聞こえる」という。見えなくて聞こえるものとすると、「音」のように思えてしまうのだが、その「音」と「時間」には密接な関係がある。音が出るときには距離によって音がずれることがある。わかりやすい例でいえば、ニュース番組で海外からの中継があった際に場所によっては2~3秒ほど間が空いてしまうことがある。そういった見えないながらも聞こえるような「時間」の存在について「脳」や「心」の動きを引き合いに出して説明している。
その5―木曜日のお話「すべては「ゆらぎ」の中に」
時間を考えていくうえで「ゆらぎ」もまた材料の一つとして挙げられる。「揺らぎ」とは、
「1.ゆらぐこと。ゆれること。
2.ある量が,平均値は一定であるが,瞬間的にはその平均値の近くで変動している現象。または,平均値からのずれ。光の散乱,気体分子の熱運動などにみられる。揺動。」(「大辞林 第三版」より)
とある。その「ゆらぎ」は音としても取り上げられているのだが、時間の「変化」も司っている。そもそも「ゆらぎ」は不規則なものなのだが、なぜ「時間」と関連しているのかというと、そもそも時間の本質こそ「不規則」なものであるという。
その6―金曜日のお話「時間は誰にとっても同じか」
「時間は誰しも平等に24時間存在する」と書いたのだが、実際には平等ではないところがある。それは「寿命」である。寿命はその人の体、精神などありとあらゆる要素が相まって変わってくる。
その寿命までの限られた時間を換算したら不平等のように見えるのだが、その時間をいかにして使うかによって充実したものになるのか、あるいは空っぽになるのか分かれる。
その7―土曜日のお話「「これから」が「これまで」を決める」
時間は「過去」「現在」「未来」へと進んでいく。そう「未来」は「過去」の状況をもとにして決められているのだが、その時間の流れについて「相対性理論」を引き合いに出して取り上げている。
「時間」は不思議なものである。本書ではそれを「科学」、その中でも「物理」や「宇宙」とともに説明されているのだが、それでもなおまだ疑問点は残る。とはいえ時間についていまだに解明されていないところもあり、哲学としても、物理学としてもまだまだ議論の余地があるといえる。
ただ、一つ言えるのは「時間」に対する不思議と「物理」の面白さがよくわかる一冊である。物理はとっつきにくいのかもしれないが、本書のようにわかりやすくかみ砕いてみると、物理に対する興味が少なからず沸いてくる。
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