いつか響く足音

かなり昔に「団地が死んでいく」という本を書評したことがあるのだが、「団地」は高度経済成長の時に続々と生まれるようになった。その団地に続々と世帯が入るようになり、その姿は高度経済成長期の日本の姿を映し出していた。ただ一つ断りを入れておく必要があるのが、「団地」は「工業団地」や「農業団地」など商業・工業・農業関わらず使われるが、本書、及び最初に取り上げた本はあくまで「住宅団地」を取り上げている。

しかしその時期が終わり、バブルを経て、「失われた10年」と呼ばれる時代の中でだんだんと廃れていくようになった。その廃れていく中でだんだんと古くさくなってしまい、本書の舞台が作り上げていった。そこで暮らす人々も一癖も二癖も着いたような人たちばかりで、人の分だけ「事情」や「秘密」が存在している。もちろんその方々の個性もあるのだが、もっと引き立っていたのが、その一癖も二癖もある人たちが集まった「集団」の中にある。その集団の中にいる人たちは世間一般で言う「幸せ」とはほど遠いけれども、それぞれの「幸せ」や「居場所」を見つけている。その姿が本書にて映し出している。