売らずに売る技術―高級ブランドに学ぶ安売りせずに売る秘密

株式会社オトバンク 上田様より献本御礼。
何やら二律背反になるようなタイトルであるが、「売らずに」というのは「売り込みをせずに」というような感じなのかもしれない。その「売り込みをせず」というニュアンスは本書にて取り上げるブランドによって異なるのだが、共通して言えるのは「売り込みをしない」ということが挙げられる。もちろん「売り込みをしない」という中には本書のタイトルにある本当の意味で「売らない」ケースもあるという。本書は「売らないで売る」ケースを取り上げながら安売りせずに売る技術を伝授している。

Chapter1「なぜメルセデスはエンジン工場をネット公開したのか」
メルセデスベンツと言えばドイツの最も有名な車メーカーで、高級車のイメージがる。そのブランドはネットでエンジン工場を公開している。工場を公開することは、ベンツの車を作っているものを全てさらけ出すことにあり、見方によっては技術をそのまま盗まれてしまうのではという懸念がある。しかしリスクもあればメリットもあり、全て公開するからでこそ、「正直」であることが証明され、なおかつメルセデスベンツに対する信頼度も高くなる。

Chapter2「デジタルネイティブ世代をのめりこませるには」
本章ではラグジュアリーブランドの一つである「バーバリー」を取り上げているが、どのようなことをやっているのかというと、動画の生放送を使ってファッションショーを公開し、その後eコマースでもってオンライン予約を行ったり、販売したりするようなことを行ったという。しかも販売のスタイルもデジタル好きに取ってはたまらないような工夫を凝らしているのも特徴としてある。

Chapter3「ネット口コミの悪評とどう向き合っていくのか」
よくネットで商品を見る時にレビューがある。そのレビューの中には悪評が必ずと言っても良いほどある。その悪評を拭おうとしても、いたちごっことなってしまうし、だからといって炎上商法の如く利用しても、結局の所火に油を注ぐような状況となってしまう。
そこで本章では物語などを利用して「本気」を伝えることによって悪評と真正面から向き合い、支持に変えたことについて、実際に行ったシャネルをもとに伝授している。

Chapter4「人々がブランドに求めるのは「お買い得」か「信頼」か」
あなたが「ブランド」に求めるのは何か。そもそも「ブランド」とは何かについて考える必要がある。「ブランド」とは、

「1.自己の商品を他の商品と区別するために,自己の商品に使用する名称や標章。銘柄。商標。
 2.特に優れた品質をもつとして知られている商品の名称や標章」「大辞林 第三版」より)

とある。商品の差別化を図るのか、あるいは信頼を求めるかのどっちかであるのだが、その中で特に問われるようになったのが「信頼」である。その信頼についてリーマン・ショックや東日本大震災がきっかけとなり、信頼向上に努めるためにルイ・ヴィトンではバッグなどとは異なるあることを行ったことで話題となった。

Chapter5「ブランドが売るのは「モノ」ではない」
ブランドはただモノを売るのではなく、そのブランドを持つことによる満足を売ったり、そのブランドからもたらされる体験を売ったりする要素もある。その要素を取り入れたブランドを取り上げている。

Chapter6「「若者の車離れ」をあきらめないために」
「若者の車離れ」は日本に限らず、先進国共通の課題である。その課題を解決するためにアウディではサッカーやアメフトに支援をすると言うことをやっているという。これを見ると、スポンサー企業として支えているのかとイメージを持たれるのだが、そうではなく、実際に選手たちに乗らせることによって印象を視聴者に与え、車に興味を持ってもらうというような形を取っている。いわゆるPRとも言えるが、PRにしても「知的」の要素があるという。

Chapter7「未来の消費者はリアル店舗に何を求めるのか」
ソーシャルメディアが若者たちに広がりを見せる中でリアル店舗に対して、そういった人々が何を求めているのか、それは「買いたい」と言うよりも「また行きたくなる」というような店づくりをしたり、「買い物」そのものを目的ではなく「買い物が楽しい」と言うような経験を持たせたりするようなことが大切であるという。

もちろんモノを売らなければ利益を得ることができず、立ちゆかなくなるのだが、ただモノを売るだけでは、今も、そしてこれからの消費者も反応はしにくくなる。その消費者を反応させるために「モノを売る」と言うことをあからさまにアピールせず、「つながり」と言うのが大きなキーワードとなり、それを持たせることによって、潜在顧客を生み出し、それが売上につなげることができる。もはや安価でモノを売る、売ることをアピールする時代は終わったのだ。