オレンジシルク

本書の著者の神田茜氏は作家でもあるが、それ以上に講談師である。講談を通じて様々な作品に触れたことにより、2011年に「女子芸人」でデビューし、作家の道を切り拓いた。

さて本書であるが、30歳になったOLが人気マジシャンに一目ぼれをしたことから物語が始まる。しかもその一目ぼれしたマジシャンを負うように脱サラしマジックの世界に飛び込んだという話である。

マジシャンと言っても単純にマジックができるだけでは意味がない。そこには独特の間があったり、驚かせるようなトリックを持たせたり、そういったことを研鑚し、「芸」に昇華していく必要がある。その「芸」を磨くことにも苦しむ姿は、著者自身も講談で真打に昇進し、さらなる講談を生み出すことに苦心した経験を持っていることから、生々しく描かれており、なおかつその中で描かれる恋愛。もちろん本書は恋愛小説で、メインは元OLとマジシャンとの恋愛なのだが、恋愛ばかりではなく、マジシャンとしての芸の磨き方も触れるなど興味深くつくられていた。