東京劣化

高齢化社会に伴い、日本の人口が減少しているだけでなく、高齢者の割合も多くなってきている。そのことから地方では集落が次々と消滅するようなことが起こり、地方の劣化が激しいと言われているのだが、それ以上に東京の劣化が激しいのだという。それはいったいなぜなのか、本書はその東京における人口問題の観点から劣化するメカニズムと対策を取り上げている。

第一章「東京 これからの現実」
2020年に東京でオリンピックが開催されるなど、明るい話題も多いと東京だが、その裏では「高齢化」「スラム化」と言うような話もあるのだという。言うまでもなく東京は日本で最も人口が多い。その人口が多いことがネックになっており、高齢化が地方以上に進んでいる。他にもインフラが豊富にあるのだが、そのインフラを新しく建てたり、維持をしたりすることが難しくなってきているのも要因としてある。

第二章「東京劣化現象への誤解」
急速に高齢化は進んでおり、少子化も進んでいる。そのことを考えると「産めよ殖やせよ」で賄うことができるかと言うと実はそうではない。他にも経済的にも成長すれば劣化は防げるのかと言うと、なかなかそうにはいかないという。

第三章「これからの東京の経済」
その東京にて支えた経済のモデルは終焉迎えているのだという。その要因と日本の企業の在り方から、品質、さらには生産モデルと言ったものがあるという。

第四章「なぜ政府は間違えるのか―人口政策の歴史が教えてくれたこと」
第二章でも日本の出生率が低下している。その対策として「産めよ殖やせよ」があるが、それでは意味がないというような話をしたが、もっとも戦前、そして戦後間もない時にはそういったことが行われた。しかしそのことが高齢化の要因となったことを指摘している。本章では言及していないのだが、それに似た例が現在の中国にも表れている。中国も戦前、そして戦後間もない時には国策として「産めよ殖やせよ」と言ったことを標榜してきたのだが、後に「一人っ子政策」を実施した。それを長らく行ってきたことにより出生率が低下し続け、そして日本以上に急速な高齢化になっていったという。

第五章「東京劣化への対処 今できること」
高齢化・経済の減速・財政赤字など様々な要因から東京が劣化していると言われているのだが、その東京が復活するためにはどうしたら良いか、それは「古き良き」と言えるのかもしれないが、かつてから江戸・東京に存在した文化にヒントがある。

正直言ってしまうと、元々地方出身の私に取っては東京が劣化してしまうことは「あ、そうですか」と言うような話題である。しかし東京の劣化は地方より激しく、それが地方にも悪循環をもたらすということを考えると看過できないといえる。その東京がどのような劣化をたどっていったのか、そしてそれを脱するためにはどうしたら良いか、そのことを示している。