左遷論 – 組織の論理、個人の心理

社会人、それも会社勤めの人々にとって「左遷」はネガティブなイメージを浮かぶ。左遷を受けると、自分自身のキャリア形成において悪影響を及ぼすというのだが、実際はそうとは限らないという。しかしそもそも日本にはなぜ「左遷」があるのかも含めて左遷のイロハについて取り上げている。

第1章「菅原道真、失意の晩年―左遷とは何か」
そもそも左遷が出てき始めたのは学問の神である菅原道真である。道真は政治家として、そして歌人として右大臣にまで上り詰めることができたが、ライバルの中傷によって閑職に移され、2年後に没した。そのことから「左遷」はネガティブなイメージが持たれた。

第2章「定期異動日は大騒ぎ―人事異動と左遷」
人事異動は毎月行われるのだが、大概大きな変化がみられるのは4月1日であり、その次は10月1日である。その様な時期には昇進や降格、さらには栄転もあるなど悲喜こもごもの時であり、大騒ぎになるようなことは確実である。

第3章「転職か、じっと我慢か―欧米には左遷はない」
そもそも「左遷」は日本独特の風習であり、欧米ではせいぜいあれば「降格」「解雇」がある。他にも転職が一般的に使われる。もっとも欧米の就職スタイルは能力や部門によって分かれ、異動することによって給与体系も変わってくる。

第4章「誰が年功序列を決めているのか―左遷を生み出すしくみ」
そもそも日本の雇用形態は年功序列であった。もちろん今でもその名残は残っているものの、現在は完全な年功序列ではなく、能力主義的な要素もあるという。その年功序列はどのように決められたのか、その時代は戦後間もない時なのだが、その戦後間もない歴史とともに考察を行っている。

第5章「出世よりも自分なりのキャリア―消える左遷、残る左遷」
左遷はキャリアに悪影響を及ぼすイメージがあるのだが、左遷によっては左遷を受けることでチャンスをつくり、寄り道ながら出世街道を進むことができるようになる。また次章でも取り上げる池上彰氏のように転機ととらえ、独立し、大活躍を遂げる人物もいる。

第6章「池上さん大活躍の理由―左遷は転機」
前章で取り上げたジャーナリストの池上彰氏は今もなおTVや本で引っ張りだこの存在なのだが、その前はNHKの職員として働いていた。主に記者やニュースキャスターとして活躍したのだが、その中で取材活動を続けたい思いで希望も出したのだが、上司の一言で退職を決意したという。

第7章「「道草休暇」が社員を救う―左遷を越えて」
左遷を受けた人にとってどのような対応をしたら良いのか、その一つの手段として「道草休暇」が挙げられる。その理由とは何かを取り上げているのが本章である。

冒頭にも述べたように「左遷」はネガティブなイメージを持たれるのだが、それは持ちようにより、チャンスに転じることができる。これは「ピンチはチャンス」と同じような考えであり、「左遷」はある意味「ピンチ」に似ているのかもしれない。