すなまわり

本書のタイトルにあるものは簡単に言えば「土俵」のことを表している。土俵は砂で覆われつつ、ラインが引いてある。周囲には藁に囲まれ、神聖な場所としても挙げられる。

ちなみに本書の主人公は力士かと思いきや、力士の夢敗れて行司の道を選んだある若者を取り上げている。

力士になることの夢、そして力士の夢を破れた絶望、そしてその代わりの道となる行司へと進んでいった。その行事になり、取り組みを取り仕切ることになった際に力士同士の戦いの数々を間近で見ることが多くなった。その間近だからでこそのやり取り、におい、息遣いなど様々な所作が刻々と描かれている。

行司の立場から相撲を描いた小説は見たことがなく、行司に関する本(行司の自伝)は見たことがあるものの、行司の立場で相撲の情景が描かれた小説を読んだのは初めてである。相撲を知っている人でも相撲のことをあまり知らない人でも楽しめる一冊である。