出版大崩壊

出版の世界は日々刻々と変化を遂げている。その変化の中には「電子書籍」があるのだが、その電子書籍は思っている以上に伸びはないものの、浸透していることに変わりはない。その電子書籍が話題となったのは今から7年前、ちょうどiPadが出てこようとしたころであり、様々なメディアが電子書籍に注目を集め始めたときである。その時には新しいマーケットを求めて続々と電子書籍の世界に進出する人々がいた。著者もその一人であるが、その進出していた中で気づいたことを取り上げている。

第1章「「Kindle」「iPad」ショック」
電子書籍が話題となったと同時に出てきたのが本章のタイトルにある2つのガジェットである。それらは今もなお進化しながら続いているのだが、そもそもなぜ「ショック」と名付けたのか、その理由を述べている。

第2章「異常な電子書籍ブーム」
電子書籍が話題となった当時はまさに「ブーム」と呼ばれる風潮にあったと言える。その時にはKindleやiPadをはじめとした数多くの電子書籍用のガジェットも生まれた。そのブームによって様々なメディアが誕生してきたのだが、果たしてそれは続いたのかというと必ずしもそうとは言えない。

第3章「そもそも電子書籍とはなにか?」
電子書籍の歴史は7年前の秋に取り上げてきた本でも記しているが、30年にもなるという。ブームになる以前にも電子書籍があったのだが、インターネットで購入できるというよりもむしろ書店へと赴いて手に入れるほかなかった。そこからインターネットを通じて電子書籍が手に入れられるようになったのはごく最近のことである。

第4章「岐路に立つ出版界」
出版界は90年代をピークに右肩下がりをずっと続いている。その続いている中で出版界は岐路に立っているという。それは様々な形で変化を遂げることになるのだが、その「変化」は受け入れられざるものであるとい。

第5章「「中抜き」と「価格決定権」」
「中抜き」は簡単に言うと著者と読者の間が丸々抜けることにある。その要因として挙げられるのが第10章にて詳しく述べる「セルフパブリッシング」にある。もっとも電子書籍にはそういったことが可能であるのだが、それにまつわる弊害もあるという。しかしこの弊害を見てみると、かつて活版印刷が作られ、成長してきた過程で起こった弊害とよく似ている。

第6章「日本市場の特殊性」
日本の電子書籍の市場は特殊であるという。その特殊である要因として漫画を中心とした電子書籍が展開されているためである。また著者は一般書籍を電子書籍にしても売れないという。確かに現在に当てはめてみると正しいと言えるのだが、完全に正しいとは言えない。その理由としてごく少数であるのだが、一般書籍でも紙と同様に売れた電子書籍もあるためである。

第7章「「自炊」と不法コピー」
数年前に自炊代行業者が著作権法違反により、裁判になったこともあった。そのことから自炊代行業者は衰退しているように見えるのだが、実際の所、数こそ多くはないもののいくつか存在する。(実際に私もお世話になっている業者もある)

第8章「著作権の呪縛」
著作権について色々な本を読んできたのだが、書籍についても問われる課題として挙げられる点なのかもしれない。その点として著者だけでなく多くの人・企業が絡んでいるためである。

第9章「ビジネスとしての電子出版」
電子出版はビジネスとして成り立つのかというと現時点でうまくいっているところもあるため成り立つといえば成り立つと言っても過言ではない。しかし電子出版をスタートして長く続いた会社は実をいうとごくわずかである。ただこういったサバイバルは電子書籍に限らずどこの世界でも同じようなものである。

第10章「「誰でも自費出版」の衆愚」
セルフパブリッシングが伝えられているのだが、実際の所それで売れる本は出版して紙で発売した本よりも厳しい。自費出版とは言えど紙媒体での出版よりもはるかに安い金額で出版できるから「誰でも自費出版」と名付けられた。

第11章「コンテンツ産業がたどった道」
紙の出版だけが苦しいだけではない。CDをはじめとしたレコード業界の売上も右肩下がりが続いている。またゲーム業界も衰退の一途をたどっている。その要因としてある「共通点」があるという。その共通点とは何かを取り上げている。

出版の世界は衰退の一途をたどっている。自身も書評家の端くれであり、出版の世界にも片足を突っ込んだことがある。その突っ込んできた中で活性化できるか模索しているのだが、まだ道半ばである。その道半ばの中で厳しい現実を突きつけられたように思えてならない。