動物で読むアメリカ文学案内

アメリカに限らず様々な文学があるのだが、その文学の中には作品によって「動物」が存在する。その動物は物語をどのようにして彩ったのか、本書はアメリカ文学を主軸にして物語を彩った動物たちを取り上げている。

第1章「リップの愛犬ウルフ」
「リップ・ヴァン・ウィンクル」は19世紀ごろにワシントン・アーウィングによってつくられた短編小説集であるのだが、その短編小説の中に「新世界の浦島」と呼ばれるところに「ウルフ」という犬が存在する。その存在する犬の中ではどのような活躍を遂げていったのかを取り上げている。

第2章「黒猫プルートー」
エドガー・アラン・ポーはアメリカ文学の中でも推理小説の第一人者の一人として知られているのだが、ある日本人小説家もその作者を捩ってペンネームとした。その小説家の名は「江戸川乱歩」である。ポーの作品の中に「黒猫」という作品がある。この推理小説は文字通りの猫であるプルートーがどのようなネコか、そしてその猫が作品の中で起こる事件を見て、触れていったのかも併せて取り上げている。

第3章「白い鯨モービー・ディック」
本章にて一気に動物が大きくなったように思えてならない。とは言えどハーマン・メルヴィルの小説作品に「白鯨」と呼ばれる動物が主体となっている。

第4章「野生にかえるそり犬バック」
ジャック・ロンドンの「野生の呼び声」で出てくる動物には犬がいる。第1章でも犬が取り上げたのだが、そこでは「飼い犬」である。しかしながら本章は飼い犬ではなく「野生の犬」である。今となっては野生の犬は見かけないのだが、「野生の呼び声」ではごく自然にいたのかもしれない。その野生の犬はどのような動向をしていたのか、その作品から紐解いている。

第5章「老人の同志カジキマグロ」
アメリカ文学の中で最も有名なものとしてアーネスト・ヘミングウェイの「老人と海」がある。その作品にも動物があるのだが、どうも食事で出くわす生き物である。その生き物はカジキマグロである。そのマグロは本作では食用と言うよりも老人の「同志」として取り上げられており、「人間と動物との共生」といったテーマがあるのかもしれない。

第6章「旅するチャーリー」
「老人と海」に次いでの有名どころとしてジョン・スタインベックの「怒りの葡萄」が挙げられる。しかしながらスタインベックが世に生み出した作品はそれだけでなく、本章にて取り上げる「チャーリーとの旅」もある。「チャーリー」は犬の名前であり、第1・4章に次いで3作品目である。ちなみにこのチャーリーは実在した犬であり、作者自身が飼っていた犬で、その犬とともに様々な旅をしたいわゆる「紀行小説」として今も残している。

物語の中では作品によって色々な動物が出てくるのだが、その動物にはそれぞれの個性があり、なおかつ物語の面白さと彩りを引き立たせる役目を担っている。アメリカ文学の中でもそのことがよくわかる一冊である。