噺のまくら

本書は著者である六代目三遊亭圓生が逝去して8年経ったときに初めて出版されたものを復刻した一冊である。「昭和の名人」と言われ、古典落語の真髄を極めた噺家は「圓生百席」をはじめ、数多くの落語がCDにて収録されており、今となってはDVDをはじめ、YouTubeにも圓生の一席が数多く収録されているほどである。

落語の中には本題に入る「演目」を始め、噺をはじめる前に時事的なことをあたかも漫談のように話す「まくら(枕・マクラ)」を話す噺家もいる。その「マクラ」の名手もおり、人間国宝となった十代目柳家小三治もその一人である。噺家の中には「マクラ」を嫌悪し、あえて取り入れない人もいる(一昨年逝去した三代目桂春団治もその一人)。

前置きが非常に長くなってしまったのだが、昭和の名人の一人である六代目三遊亭圓生はマクラを取り上げず本題に入る噺家かと思いきや、難しく、なおかつ長い演目になる場合は少し「解説」や「情景」を話すこともある。そのマクラを収録されているのが本書である。マクラ一つ一つに本題となる噺の風景やキーポイントが散りばめられており、現実と落語の世界の架け橋となるようなマクラばかりである。

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