14歳のバベル

SF

旧約聖書の「創世記」に「バベルの塔」なるものがある。それは、

「1.ノアの大洪水後、人々が築き始めた天に達するような高塔。神はこれを人間の自己神格化の傲慢として憎み、人々の言葉を混乱させ、その工事を中止させたという。
 2.転じて、実現の可能性のない架空的な計画。」(「広辞苑 第七版」より)

とある。本書はもちろん小説なので1.の意味に限りなく近いのだが、そのバベルについて14歳の男の子が見た夢が空想となり、そしてバベルの塔の物語を生み出すようになったという物語である。

その少年はとある病のためにより病院に入院することになったのだが、その病院の中で見た「夢」によって広がるファンタジーの世界が広がっていく。その広がっている世界に「バベルの塔」が表れる世界であるという。

「バベルの塔」と言うと最初にも取り上げたように宗教的な要素があるのだが、たいがい、その言葉を使うのは2.にて表現されている比喩的な方法にて扱われることが多い。しかし本書は重々しい「バベルの塔」の伝説をファンタジーの世界に移していくとどのようになるのか、そして夢と現実の狭間がなんとも面白味が出てきてしょうがなかった。

ファンタジーの部分もあればその狭間にもがきながら、そして夢が現実に表れるようなきっかけが出てくる場面があるなど、単なるファンタジーやSFだけでは語られないような要素が出てくるなど、ページをめくっていく中でめまぐるしく世界が変わるため飽きさせなずにできている一冊と言える。