鉄道とトンネル―日本をつらぬく技術発展の系譜

今となっては当たり前の存在になってきているのだが、私が故郷にいた頃は電車に乗ること自体珍しかった。電車・列車の線路はあったものの、たいがいは100㎞ほど先の所に遠出するようなケースであり、近場だとバスを使うことが一般的であった。

私事はさておいて本書の話に移る。鉄道とトンネルは切っても切れない関係にあり、鉄道の歴史の中にも鉄道・道路関わらず様々なトンネルが生まれた。そのトンネルの歴史も日進月歩の如く進化を続けており、歴史に残るようなトンネルも存在する。そのトンネルと鉄道はどのような関係にあり、発展して行ったのか、その系譜を取り上げている。

1.「トンネルの基礎知識」
「トンネル」とは、

「① 鉄道・道路・水路などを通すため山腹・河底・海底・地下に貫いて設けた通路。隧道(すいどう)。
 ② 俗に、野球で、ゴロの球を股間から後方へ取り逃すこと」(「広辞苑 第七版」より)

とある。言うまでもなく本書は①を意味しているのだが、貫くところは様々であり、私の知る限りでその多くは「山腹」である。もっともトンネルの日本語読みとして出典にもある通り隧道とあるのだが、これは中国語からできており、大東亜戦争後はトンネルの呼び方が一般的になった。

2.「日本列島の背骨を貫く鉄道のトンネル」
日本には長短問わず、様々なトンネルができている。そのトンネルのでき方もそれぞれであるのだが、一つ言えるのは鉄道トンネルは日本列島を背骨のごとく貫いているところにあるという。

3.「トンネルの工法」
本章では私たちの知らなかったトンネルの施工の方法を採り上げている。トンネルは単純に山や海底などを掘って作るといわれているのだが、その中には崩落事故を防止するための施工や保守などがある。中でも有名なものとして青函トンネルの工事方法や補強なども解説されている。

4.「明治時代を代表するトンネル」
鉄道のトンネルを表していくと、遡ること明治時代にまでになる。鉄道ができ、開通し始めた頃から既にいくつかトンネルが施工され、完成されていった。今もなおいくつかのトンネルが現存されており、あらましも含めて取り上げている。

5.「昭和初期を代表するトンネル」
鉄道技術はもちろんのことトンネル施工も深化して行く。明治時代は山岳地帯や海底などにトンネルを作ることが不可能とされてきたのだが、昭和初期になってからはそれが可能となり始めた。それを代表するトンネルを3カ所取り上げているのだが、中でも最も有名なものとして本州と九州を結ぶ関門トンネルが挙げられる。

6.「戦後を代表するトンネル」
大東亜戦争後にてつくられたトンネルを取り上げているのだが、もちろん最も有名な青函トンネルも収録されている。中でも印象に残ったのが「北陸本線」である。トンネル名ではないという指摘もあるかも知れないのだが、北陸本線は戦後近代化により、トンネルが次々とできたことで知られるからである。

7.「新幹線――地上を走る地下鉄」
私自身人生の中で新幹線人に乗ったことは数えるほどしかない。もっとも乗ったのも東海道新幹線・山陽新幹線であり、他の新幹線には1度も乗ったことがない。そのためどこか旅したいときには別の新幹線に乗ろうかとも考えている。
それはさておき、新幹線でもトンネルは通る。そのトンネルは有名どころで土のようなスポットがあるのか、そのことについて取り上げている。

8.「地下鉄――都会のトンネル」
地下というと地下鉄を連想してしまう。東京や大阪、仙台、福岡、札幌などの大都市圏には必ずと言っても行っても良いほど「地下鉄」が存在する。特に東京に至ってはまるで蜘蛛の巣のようであり、一度迷うとどこに乗り換えたら良いのか分からなくなってしまう。その地下鉄もまたトンネルであるのだが、その特徴とあらましについて取り上げている。余談だが本章を読んでいると「春日三球・照代」の「地下鉄漫才」を思い出してしまう。

トンネルの歴史を見てみると奥が深い。最近では鉄道のみならず、歩道・車道にもトンネルがあり、私たちの通る道の中で必ずと言っても存在するまでになった。しかしその根幹は鉄道にある。その深さを知ることができる一冊であった。