漱石のこころ――その哲学と文学

日本を代表する文豪は数多くおり、夏目漱石もその一人である。夏目漱石が残した作品は数多くあり、国語の教科書に載るようなものも少なくない。名作と呼ばれる小説を残している漱石はどのような哲学があり、思想を作品として残してきたのか、夏目漱石が残した諸々の作品を見ながら考察を行っている。

第一章「『坊っちゃん』の諷刺」
文学作品の中には社会諷刺になるようなことも少なくなかった。「坊っちゃん」の中にもそういったものがあり、特に物語の中に明治時代における社会の批判をレトリックとして扱っていたほどであったという。

第二章「明治の知の連環」
元々作家になる前の夏目漱石は英語の講師や翻訳家としても活動していた。その講師の中での伝説として「I love you」について「月がきれいですね」と訳すように生徒に伝えたことがあげられる。もっとも明治時代においての知は漱石にとってどのようなものを得たのかを取り上げている。

第三章「ロンドンでの構想」
1900年頃には英国に留学することになった。その留学には英語留学、さらには文学の留学としてもあったのだが、その留学の中で英国文学を読みあさったという。その読みあさった中で作家としての構想はどのように練ってきたのかを追っている。

第四章「文学は時代精神の表れ」
夏目漱石の作品には時代背景と思想が取り入れられることが多くある。その時代における文化や社会をそれぞれのことを表しており、なおかつ漱石が自ら触れた哲学もまた文学に反映している。

第五章「エゴイストの恋」
有名な作品の一つである「それから」について取りあげているのだが、その中では三角関係を描いているのだが、その関係はまさに「エゴイズム」と評するような意味合いを持っている。

第六章「私を意識する私はどこに」
夏目漱石の晩年の思想として「則天去私」がある。その四字熟語のある中での「私」はどこにあるのか、そしてその思想はなぜ形成づけたのか、そのことを取り上げている。

第七章「『こころ』の読まれ方」
夏目漱石の人生の一部を映し出しているように思えてならない名作として「こころ」がある。嫉妬や遺書などの描写もまた夏目漱石の人生の中で出てきたことを如実に表しているのだが、そもそもなぜ「こころ」がつくられたのかも含めて言及している。

夏目漱石は日本文学の中でも重要な位置を持っている作家としてあげられる。その人が残した作品は今もなお名作として親しまれている一方で、夏目漱石の人生や思想が所々に織り交ぜられている。その奥深さが本書にて表れていると言っても過言ではない。