ゴジラとエヴァンゲリオン

一見共通点がないように見えて、実は同じ人物によってつくられたことがある。その人物こそ庵野秀明である。エヴァンゲリオンは今から23年前の10月に初めてテレビアニメとして生まれ、2016年には「シン・ゴジラ」で脚本と総監督を務めた。方やアニメ(映画含む)で不動のモノにし、方や長らく映画が製作され、日本を代表とするキャラクターにまでなった存在の共通する「線」とはいったいどこにあるのだろうか、そのことについて考察を行ったのが本書と言える。

第一章「ゴジラ―核と敗戦の怪獣」
ゴジラが初めて世に出たのは1954年、大東亜戦争が終戦を迎えて10年足らずである。その時は敗戦の息吹が色濃く残っており、そのため敗戦の記憶を呼び起こさせる恐怖の存在として呼び起こした存在として出てきたといわれている。ちょうどその時にはビキニ環礁における核実験において第五福竜丸が死の灰を浴びて被曝したこともあり、それがゴジラの着想につながった。

第二章「増殖する怪獣―スター化するゴジラ」
恐怖の象徴としてあったのだが、後にモスラやキングギドラ、メカゴジラなどと戦うことになり、怪獣対怪獣といった戦いの様相を見せる映画ができた。そのことにより恐怖の象徴から一転国民的なヒーローにまでなった。そのような存在に変化したのは昭和末期~平成になってからのことである。

第三章「エヴァンゲリオン―ロボット・人造人間・オタクの物語」
その平成に入って出てきたのが「新世紀エヴァンゲリオン」である。冒頭でも述べたよう1995年の10月にテレビ東京系列の夕方にて放送され、その後長きにわたって映画が製作されるなど、社会現象にまでなった。エヴァンゲリオンのキャラクターの描写も斬新であり、社会的な考察の題材としても頻繁に使われるほどであった。

第四章「再構築されるエヴァ―錬金術・終末論・庵野秀明の作家性」
そのエヴァンゲリオンは最後の2話がその社会現象を巻き起こすきっかけにもなった。その延長や考察にあたるモノとして「ヱヴァンゲリヲン」と名を変えるなどして映画となり、ヒットを生むようになったのだが、「エヴァンゲリオン」と「ヱヴァンゲリヲン」とでつくられた庵野秀明の思想と作家性はどうであったのかを著者自身の観点から切り込んでいる。

第五章「ゴジラとエヴァ―その反復と再生」
ゴジラの映画化の変遷と庵野秀明の活動において、どのような「反復」が見られ、なおかつ2つの要素が1本の「線」としてつながるようになったのか特に21世紀のゴジラとエヴァの変遷と共に取り上げている。

日本を代表する2つの作品は共通しないようでいて、庵野秀明という一人の人物でなくても、1本の「線」としてつながっているように思えてならなかった。一昨年に「シン・ゴジラ」が上映されヒットし、ヱヴァンゲリヲンも新しい劇場版が2020年公開向けて動いている。1本となった「線」はこれからどのような変化を辿っていくのか、見物である。

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