自動車会社が消える日

本書に出会うまでは自動車産業が危機に瀕しているとは思ってもみなかった。既に世界最大の市場として日本経済の屋台骨の一つを担っている自動車業界は、様々な面で先導している立場にあるように思え得て、近年はスマホなどのIT業界や部品業界が自動車産業にノリだしていると著者は見ている。そのことを考えると自動車も進化しており、部品やIT化も進みつつあることを鑑みるとそうなのかもしれない。本書はその自動車会社・業界の見えない「危機」をあぶり出している。

第1章「スマホ化するクルマ」
もはや車もまたスマホ化しつつあると言える。車の中にある技術も半導体と呼ばれるコンピュータが組み込まれるようになり、なおかつ自動運転も行われる技術も開発されているほどである。そのため手軽に運転できるような車もできはじめている現状にある。

第2章「バーチャル・エンジニアリングという脅威」
車の開発もまた技術革新が進んでいる。開発は手作業や流れ作業が中心であり、あたかも「1000本ノック」のようなことが行われて猪田が、実際にはパソコンの画面上で制御をしながら生産を進めているほどである。専用のツールまでつくられているほどである。

第3章「合従連衡 2000万台規模の攻防」
1990年代の後半には自動車業界にて大きな変化が起こり、合従連衡が相次ぐようになった。ある自動車会社は他社に経営権を譲り、またある会社は他社の傘下に入るようにもなった。世界で数百万~数千万台売り上げている中で業界の中では2000万台を基軸にした戦いがあるのだという。

第4章「トヨタ自動車 巨人の憂鬱」
今となっては世界一の自動車メーカーをほしいままにしたトヨタであるのだが、ここ最近は陰りを見せている。それは第1章で述べた「車のスマホ化」の対応に遅れが生じている部分があるためである。しかしながら開発はメディアでは明かされない範囲で進められており、その一端を著者自身も取材したことを明かしている。

第5章「VW 史上最大の改革」
そのトヨタと世界販売台数で首位を争ったのがドイツのフォルクスワーゲン(VW)がある。2015年に不正問題が浮上したことはあったものの、それを糧に不正を起こさせず、なおかつ改革を進める起爆剤にするようにしたほどである。そのことが自動車産業史上最大の改革にまで押し上げたのだという。

第6章「日産 ゴーンが抱く世界一という野望」
「辣腕」と言われたカルロス・ゴーンが日産の社長に就任したのが2000年のこと。それまでは日産というブランド自体が傾きかけていたときであった。ゴーンが社長に就任してから立ち直り、その後の活躍は周知の通りである。しかしゴーンは日産やルノーを含めた「世界一」の自動車業界にする野望を秘めていた。

第7章「ホンダ ソフトバンクに刺激されるDNA」
速い車の時代から、エコな車、そして自動運転技術の取り入れまで時代の先を行くような技術を次々と取り入れる姿勢がホンダにある。本章ではその中でも自動運転技術の取り入れについて、ソフトバンクに刺激されたエピソードを明かしている。

第8章「マツダ 危機こそが革新を生む」
マツダもまた他の自動車メーカーと同じく地獄を経験してきた。しかしながら、常識にとらわれない開発の在り方から「矛盾」をいかに利用するかと言った、極めて「独自」という言葉が似合うような手法で復活を遂げた。

自動車産業は大きな変化が起こりうる。それは自動運転技術もあればIoTの中に自動車を取り入れると言うものがある。そのことから自動車産業の中でもそれについて行けない企業は危機を迎えるという論法であるのだが、遅かれ早かれ時代に食らいついていく姿勢が本書では表されている。そのことを考えると本書のタイトルにあるような本当に危機を迎えているのかが疑問に思えてしまう。