日本とドイツ ふたつの「戦後」

日本とドイツは共通点がいくつかあるのだが、その中でも本書で取り上げているのが「第二次世界大戦」の「敗者」であることに挙げられる。敗者同士の国であるのだが、戦後からの国としての姿勢は大きな変化を挙げてきたと言っても良いほど過言ではなかった。その異なる2国の戦後の在り方についてドイツを中心に取り上げているのが本書である。

第一章「イスラム過激派の脅威とドイツ」
2014年あたりに盛んに報道されたのがISILをはじめとしたイスラム過激派の脅威に対するスタンスである。その中で難民がヨーロッパ諸国を中心に移民しようとしたのだが、ドイツはその脅威に対して「移民国家」と位置づけ移民を受け入れるようにしたという。

第二章「ドイツ人はどのように過去と対決しているのか」
もっともドイツが敗者になったのは第二次世界大戦だけではなく、「第一次世界大戦」でも敗戦国となっている。そのためドイツは幾度も敗戦国としてのスタンスを持つようになった。その中で敗戦国として「過去との対決」を強いられ、なおかつ第三章に述べるように歴史と向き合ったといったことを取り上げている。

第三章「歴史リスクを重視するドイツ、軽視する日本」
もっとも日本は歴史認識問題が長らく起こっている印象が強い。もちろん保革の両方の側にての主張や隔たりが多く、今もなお果てのない議論が続いているというほかない。それはドイツについても同じ部分があるのだが、根本的に異なる部分がある。「歴史リスク」の考え方である。そのリスクを受け入れ、重視するかどうかによって歴史認識問題を出させない、あるいは終息を早めるかといったことがあるためだという。

第四章「ドイツ経済の奇跡」
日本も戦後の荒んだ社会から立ち直り、「高度経済成長」を経て、一時期は世界第2位の経済大国にまで成長した奇跡があった。ドイツもまた時間の隔たりはあったものの「奇跡」があった。それはユーロ危機と呼ばれ、ヨーロッパ中が経済的に苦しんでいるなかで唯一といっても良いほど、危機に遭うことなく、経済成長をしているというところにあるのだという。

第五章「日独エネルギー政策の違い」
主に原発再稼働を進める日本と、原発全廃をするドイツの違いを取り上げている。その基点として一つはチェルノブイリ原発事故、もう一つは記憶に新しい福島第一原発事故の2つである。その2つの事故は日本・ドイツとで認識に大きな違いがあるのだという。

日本とドイツは共通している部分がある一方で異なるものもある。特に歴史的な部分、原子力的な部分は全く異なる認識を持っているといえる。もちろん参考になる部分もアルのだが、それがどこにあるのか、それは日本とドイツをよく知らないと分からない。