フランツ・シューベルトは交響曲や歌曲の作曲家として有名であるのだが、実はシューベルトはオペラを作曲したこともある。全部で19作品あると言われているのだが、音楽関係者の評価は低く、なおかつあまり知られておらず、それか上演回数も少ないと言われている。そのため本書の帯に「知られざる横顔」と表記されている。本書はその19作品あるオペラを余すところなく紹介しているのだが、他にシューベルト自身の生涯からなぜオペラを作曲し続けたのかそのことも取り上げている。
Ⅰ.「シューベルトの生きた時代と生い立ち」
シューベルトはオーストリア・ウィーンで生まれ、音楽院で音楽を学び作曲家へと進んでいった。その生涯についてはいくつかの本では取り上げられており、本章ではそのさわりを紹介している。
Ⅱ.「最初のジングシュピール」
「ジングシュピール」とはドイツ語における歌芝居や大衆演劇の一つとしてあげられ、ドイツ語における「オペラ」とも言われている。シューベルトが最初に作ったオペラとして「鏡の騎士」があるのだが、この作品は「未完」であった。1811年のことである。その2年後には「悪魔の離宮」も発表している。当時のシューベルトは日本で言う所の中学~高校生の頃にこの2曲を作曲した。
Ⅲ.「初期のジングシュピールとオペラ」
「4年間の歩哨兵勤務」をはじめとしたオペラを取り上げているのだが、当時のシューベルトは20代前後であり、「若書き」と呼ばれる表現も所々見られる。本書で取り上げるオペラの紹介には珍しく「上演記録」といわれるものがあり、めったに上演されない中で最近上演されたものや初演に至るまでの所も紹介されている。
Ⅳ.「中期の舞台作品」
中期には「双子の兄弟」や「ラザロ」などの作品が作られてきた。作曲依頼を受けてつくったオペラもあればキリスト教や海外の古典をベースにしたオペラも世に送り出している。
Ⅴ.「円熟期の大作」
晩年に近づいていくとオペラの大作も作られるようになった。現存する中で完成された最後のオペラである「フィエラブラス」もこの時期に作られている。
Ⅵ.「舞台作品における白鳥の歌」
本章では最後につくられた「グライヒェン伯爵」を取り上げている。オペラの作品の中には未完の作品もあり、グライヒェン伯爵も未完の作品である。当初は完成するつもりでいたのだが、結局完成せずにこの世を去った。
Ⅶ.「まとめ」
そもそもなぜシューベルトはオペラを書き続けたのか、そしてオペラの魅力とは何かについて取り上げたのが本章である。
シューベルトの作品の中で最も有名な曲として交響曲第7(8)番、通称として「未完成」とある。交響曲だけ未完成かと思いきやオペラ作品の中ではいくつもの「未完成」作品があったことに驚いた。同時にオペラ作品があることにも驚いた。シューベルトのオペラはCDなどでも見つからなかったこともあるのだが、そもそも上演がほとんど行われていない(作品の中には台本が消失しており、できないのもある)こともあり、知られていないことが窺える。本書をきっかけにどれだけ上演されていくのか、それは定かではない。
コメント