ピアニストは語る

クラシック、特にクラシックピアノを知っている方であればヴァレリー・アファナシエフという人物は知っている人がいるかもしれない。その人は世界を代表するピアニストの一人であり、詩人や作家の側面もある。

本書は日本にて語ったものを、いわゆる「聞き書き」として取り上げた一冊であるのだが、あくまで「ピアニストとして」のヴァレリー・アファナシエフを綴っている。

第一部「人生」
元々ヴァレリーは旧ソ連の生まれであり、音楽の基礎もそこで学ぶようになった。しかし当時は冷戦の真っ只中にあり、ヨーロッパへ行くことの多かったヴァレリーは、ベルギーへ演奏旅行を行った後に、その国に亡命し、ベルギー国籍を取得したのである。そこには冷戦ならではの政治的背景があり、その背景に巻き込まれた部分が強い。亡命するまでの間も政治的な背景に巻き込まれることもあったほどである。

第二部「音楽」
かつてはムソルグスキーなどロシア作曲家の曲をレパートリーとしてきたのだが、ベートーヴェンやシューベルト、さらにはブラームスなどの音楽にも触れることもあり、ピアノリサイタルなどでもあまり聴くことのない曲を積極的に取り上げる傾向がある。その要因としてはヴァレリー自身が培ってきた音楽観そのものにある。

ヴァレリー・アファナシエフは世界的に有名なピアニストの一人であるのだが、その人生は本書を読んでいくと政治的な背景に巻き込まれた人物の一人であった。しかしそれは表に出ているところの一つであり、本当はピアノ曲の中でもあまり表に出てこないような曲を積極的に取り上げつつ、独自の世界観を表現しているといっても過言ではない。そのことを如実に著した一冊と言える。

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