人口減少と鉄道

日本の人口は2008年をピークに減少傾向にある。推計によると今から30年後の2048年には1億人を切り、2060年には8674万人にまで減少するとみられている(「国土交通白書 2013」より)。右肩下がりとなっている現在の日本の人口であるのだが、地域によっては過密化、逆に過疎化しているなど格差が生じているのも事実としてある。

そのような中でインフラの一つである「鉄道」はどのようなポジションにいるのだろうか、そして鉄道としてのビジネスはどこに向かっているのか、本書は各鉄道会社・路線の現状と共に論じている。

第1章「人口減少時代の鉄道ビジネス」
鉄道を使っている方々であれば人口減により、混雑も少なくなると言う考えを持つ方もいるかもしれないのだが、実際には一極集中が増えており、混雑が悪化する路線もあるほどである。しかしながら鉄道各社は様々な緩和対策を行っており、功を奏している所もあればそうでない所もある。
また人口減少によって特に地方の鉄道会社、さらには路線・駅などでは赤字が出てきており、運営そのものも難しくなっているところもある。

第2章「逆境で成長するJR九州」
地方の中で逆境の中成長を続けている鉄道会社がある。JR九州である。赤字がずっと続いている中で、多角経営を行いながらも、成長を続けることを取り上げているのだが、根幹の鉄道でも新しいことを打ち出して成功しているものもある。

第3章「成長産業としての鉄道」
そもそも鉄道はどのような産業であるのか、考える必要があるのだが、人によっては「斜陽産業」と呼ぶ人もいるのかもしれない。しかしながら、改革を行っていくことによって成長産業に転ずるポテンシャルを秘めている。そのポテンシャルはどこにあるのかを分析している。

第4章「国鉄の失敗を繰り返さない」
国鉄から民営化されたのは32年前のことである。もともと全国の鉄道を国鉄1社でまとめていたものを地方・貨物によって7分社化したことにある。その分社化は成功か失敗化についてはまだまだ議論の余地が残っている。とはいえ、国鉄時代にも失敗といわれたことがあり、それが今もなお残っている現状もある。失敗を繰り返さないために何をすべきなのかを提言している。

第5章「世界に羽ばたく日本の鉄道」
日本の鉄道は質が高いことで有名であり、海外への展開も積極的に行われている。その展開はどこまで広がっているのか、本章ではそのことについて取り上げている。

鉄道業界は成長しているのか、衰退しているのか、全国津々浦々にあり、なおかつJRのみならず私鉄各社もあるため、判断するのは難しい。しかしながら遅延や運転見合わせがあるとはいえ、ほぼ定刻通りに鉄道を運転できるという「質」の面では他の国とことなり、強みであることには間違いない。人口減少の中で鉄道はどう変化していくのか、過去と現状を知り行く末を見定める一冊が本書と言える。