ふるさと創生―北海道上士幌町のキセキ

かつて自民党は「地方創生」というスローガンの元、地方の活発化を促した。その結果はまだ出ていないのだが、効果がないと行った声も所々聞く。しかしながら地方によっては自ら創生を行い、消滅可能性都市から生還した所も存在する。本書は北海道の道東部、旭岳(大雪山)の近接している山岳部の上士幌町の復活劇を追っている。

第1章「海の向こうに地方が見えた」
上士幌町は十勝地方の北部に面しており、平野の多い十勝の中でも山岳の多く、平野が少ない珍しい地域である。人口は1955年に約1万3千人をピークに減少し始めたものの、様々な政策や対策を行い、最近では人口は増加し始めているという。

第2章「上士幌という町」
上士幌町はかつて林業の町で会ったが、今となっては牧畜の町であり、皮肉な言葉として「人より牛が多い町」と言われていた。また右肩下がりといわれていた人口減から市町村合併の煽りを受けることもあった。

第3章「ふるさと納税」
その一方で「ふるさと納税」の納税額は全国でも上位に位置している。返礼品も豪華であるのだが、よくニュースで取り上げるようなお騒がせの返礼品ではなく、上士幌町ならではの品が数多くある。種類も多岐にわたっているからでこそもあるのだが、町議会や町長らのアイデアもあり、ふるさと納税増加につなげることもあった。他にも上士幌町の長所をフルに活かしたツーリズムなど行政・民間問わずに「オール上士幌」で行った。

第4章「「ふるさと納税」寄付金の行方」
ふるさと納税で得たお金を今後の発展のために大いに役立てている。こども園の建設や「健康ポイント」制度の制定、さらには地方創生を行うための会社の設立などがある。今後の上士幌町の発展と市民の活性化が大きな主軸と見て取れる。

第5章「かみしほろ塾と起業塾」
本章では上記の2つの塾を取り上げている。前者は地方創生のためのカルチャースクールなるものであり、生涯活躍するためのエッセンスを学ぶというものである。後者は上士幌町で起業し、そしてビジネスとして発展して行くための財団をつくり、起業家をつくり、育てるといった要素がある。

第6章「人口増加と移住者」
地方の人口減少が止まらない一方で町によっては増加に転じている所もある。上士幌町もここ最近その1つとしてあげられるのだが、その要因としては移住者の受け入れも行っているところにもある。

第7章「ICTと地方創生」
上士幌町は活性化したのだが、まだ発展途上であることが本章でも見て取れる。これからますます活発化していくためにはICTの向上もまた手段の一つとして挙げており、自然とICTとの融合もまたねらっている。

北海道は全部で179の市町村があり、市町村の中には限界市町村といわれ、財政破綻をした所も存在する。その一方で上士幌町のように復活を遂げ、新たな活性化の兆しを見せる町も存在している。地方創生を行うにしても市町村それぞれの考え方や形がある。本書はあくまで上士幌町が行った事例であるのだが、これこそ「地方創生」ということを指し示している。