私自身、アートの世界にあまり踏み行ったことがなく、それ故に詳しくない。しかしアートの世界に出会うようなチャンスがあれば、踏み入れてみようかなと考えている。
私事はここまでにしておき、アートとビジネス、本書の「はじめに」にも言及されているのだが、2つは関連性がない、むしろ対極にあるのではと思われがちなのだが、実はつながりを持っていたという。もっともアートとビジネス、どのように関連付けられるのか、本書はビジネス法則も兼ねて取り上げている。
第1章「アートとは何か」
アートにしても、美術にしても、芸術にしても、それらをどのように定義することは難しい。定義自体がその人々の価値観などに左右されるためである。しかしその定義のおあり方こそ、理屈では説明できない要素であり、なおかつアートの力としてある。
第2章「遊び力「アートの自由さが、ビジネスに革命をもたらす」」
「仕事は遊び」と定義している方も中にはいるかもしれない。仕事にしても、文化にしても、新しい概念を生み出すためには何らかの「遊び」から生まれる。本章ではそのことについてGoogleやフランスの美術教育なども絡めて紹介している。
第3章「物語力「ストーリーが、お客様の心を動かす」」
物語は決して小説などのコンテンツばかりではない。仕事にしても、販売などにしても通用することであり、物語に関しての仕事術を定評したビジネス書も存在するほどである。論理を超えたストーリーはお客様の心を動かすほどの疑似体験ができるところにあるのかもしれない。
第4章「俯瞰力「全体を俯瞰する力が、ビジネスに新しい局面を開く」」
物事を俯瞰することはビジネスの世界では結構言われている。なかでも新しい技術やノウハウを取り入れるために他業界から学べる要素もあるという。
第5章「観察力「微にいり細を穿つ観察力が、ビジネスを強固にする」」
アートの世界では様々な面での「美」を堪能することができる。その中でも細かさにまつわる「美」もその一つである。その「美」を求めるには観察力が必要である。その観察力はビジネスをより強くするために必要なことであるのだが、お客様を「観察」することで課題が見えてくると言う。
第6章「共感力「アートの共感力が、お客様との信頼関係をつくる」」
アートにしても、商品にしても「共感」を持つことが大いにある。それはものだけではなく、お客様と提供する人との間にも存在するものである。その関係の中で共感を得られることによって、信頼関係を構築することができるようになると言う。
第7章「類推力「異なるものを関連付ける類推力が、ビジネスアイデアを生む」」
アイデアは色々なところで生み出すことができる。もっともアイデア自体、今あるものとの組み合わせによって生まれる、しかしその「組み合わせ」こそが肝心で組み合わせ方が斬新になることで新しい概念・ものが生まれる。その組み合わせは類推と言ったもので生まれていき、鍛えられるという。
第8章「美に対する憧憬「アートの美が、お客様をひきつける」」
アートはよく「美」を基準にすることがあるという。その美こそが「憧憬」を生み、価値として高めていく。ここ最近では歴史的な作品だけでなく、前衛的な新作も億単位で落札されるほど高騰しているのだというが、その要因についても言及している。
第9章「美術教養「アートは知れば知るほど面白くなる」」
アートは美を楽しむところにあるのだが、展示されているものも全て意味が込められているという。その展示されている美術の数々を見ることによって深みを知ることができるという。
アートとビジネスは一見関連性がないように見えて、実を言うと関連性が多い。アートに関する感性や考え方については大枠におけるビジネスの考え方に共通するといったものから、資料のまとめ方についてもまたアートから学べるところもある。本書はあくまで前者のことを指しており、双方のおもしろさを知ることのできる格好の一冊である。
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