好きなひとができました

一見ポジティブな言葉のように見えるのだが、好きな人から、あるいは恋人から言われると、これ以上傷つけられるような言葉は存在しないのだという。彼女はおろか恋愛自体が何十年もない自分にとってはどれほど傷つけられるのかは未知数である。

しかしその言葉はとてつもなく重く、なおかつ残酷であり、人によっては殺人事件を起こしたり、自暴自棄になったりすることさえもある。またまさに「慟哭」と呼ばれるほどの酷い悲しみに苛まれるようなことさえもあるのだという。

本書は女性をいくつも付き合ってきた男がタイトルのような言葉を伝えて別れを告げ続けていくといったことを行ったとによって周囲の関係を歪ませていくという物語であるのだが、「女性の怖さ」を知らない主人公という印象があったと同時に、主人公の男性の軽さ、そして両方の関係が違えたことにより紡がれるミステリーが他のミステリー作品とは異なる「怖さ」を知る一冊であった。