だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人

東南アジアとして最も栄えている国の一つとしてタイ、その首都であるバンコクにて働く日本人がいる。本書で取り上げる日本人たちは日本において、生きづらさ・息苦しさなどを体験し、居場所を求めて渡った方々である。その方々がタイにてコールセンターにて働いているのだが、なぜタイへと渡ったのか、そこには他人には言えない「理由」があった。その「理由」と現在について働いている方々を映し出したのが本書である。

第1章「「非正規」の居場所」
そもそも本書で取り上げているコールセンターは日本の企業である。以前から日本の企業では中国などにコールセンターを設ける所が出てきており、15年ほど前になるとタイに設立するといったこともあったという。そのタイへ進出した企業で働く日本人も少なくないのだという。
まず本章ではいじめなどに悩み、学校卒業後、非正規労働を転々としてきた中でDJを目指してタイへと渡った人物を取り上げている。コールセンターとして働いている中の姿と、そして夢へ向かって歩む姿、その一方で日本からタイへと渡ったことなど余すところなく語られている。

第2章「一家夜逃げ」
本章ほど身につまされる思いをした章はなかった。私自身は家族を持ったことがないのだが、世渡り下手が災いし、借金を残してタイへと渡っていった人を取り上げているのだが、その人だけでなく、現地にて働く方々にインタビューを行っている所があり、その中には日本での「生きづらさ」が如実に表れていた。

第3章「明暗」
コールセンターとして働いた先にはどのような道があるのか、その明暗がハッキリと分かれた人物2人を取り上げている。前者はコールセンターから起業をし、後者はホームレスへと墜ちていった。その両者に共通して言えることがコールセンターの経験についてである。その経験についての胸中はキャリアの先の人生を歩んでいった道は違えど共通していたという。しかしそれはネガティブな意味であるという。

第4章「男にハマる女たち」
ドラマなどの物語の中で女性関係に溺れる男性という姿を何度も見たり読んだりしたことがあった。しかしその逆の女性はと言うと、さしずめ「ホストクラブ通い」で溺れたと言う姿を連想してしまう。しかしその連想した想像を遙かに上回るハマり方をしている女性の姿が本章にあった。まさに「色狂い」と言う言葉がよく似合うほどであった。

第5章「日陰の存在」
最近ではLGBTに関する認知が広がってきたとはいえ、まだ足りない現状にある。偏見も未だに根強く残っており、抱えている方々にとっては生きづらさを感じてしまうことが多くあるという。その生きづらさを感じ、タイへと渡った人を取り上げているのが本章である。

タイへと渡った人々の姿を見た時、はたして日本はいい国なのかという疑問を持ってしまう。もっと言うとタイへ渡った人々も必ずといってもいいほど「幸せ」とは言えない人生を送っている。その姿をまざまざと見せつけたのと同時に、日本はこれからどうしたら良いのかを考えさせられる一冊でもあった。

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