AIの技術は目覚ましく、最近では囲碁・将棋の世界でトッププロに勝利したという事例がある。それだけ計算制御面でも大きな進化を遂げており、実際にAI技術でもって人間の仕事がロボットによって行われると言った事も出てくる。と同時に人間としての仕事が失われると言ったことを危惧している人も少なくない。もっとも技術革新によって新しい仕事が生まれたり、逆に失われたりといったことはあり、別にAIが生まれたから危惧するというわけではない。
とはいえ、AIやIoT技術の進化、そして実用化によって仕事の在り方が変化することは間違いない。その変化とは何か、雇用体系はどうなっていき、なおかつ人間はどのような労働スタイルを築いたら良いのか、その未来を予測しているのが本書である。
第1章「第四次産業革命とは、人工知能とは」
そもそも「第四次産業革命」は、
「2013年4月にドイツが「インダストリー4.0構想」を発表した際、過去の減少とは大きく異なる内容であることを強調するために、彼らが使い始めた言葉である」(p.22より)
という。ちなみに「彼ら」とはドイツ政府のことである。そもそもなぜ「第四次」と銘打っているのかというと、過去にある第一次~第三次とを比較して、
・第一次産業革命・・・18世紀末、人間の労働力に代わり、工場内に蒸気機関による動力源が導入された。
・第二次産業革命・・・20世紀初頭、工場内に電力が導入され、ベルトコンベアの流れ作業で大量生産が始まった。
・第三次産業革命・・・1970年代、工場内に産業用ロボットや工作機械が人間に代わって導入された。
・第四次産業革命・・・21世紀になると工場内の機械設備がネットワークで接続される
(p.23より)
となる。もっともIoTが実用化されてきており、工場の生産ラインでも使われ始めているだけあり、現に第四次産業革命は行われているとも言える。
第2章「AIは雇用を破壊するか―フレイ&オズボーン推計とドイツのチャレンジ」
「フレイ&オズボーン推計」は2013年9月にオックスフォード大学のカール・ベネディクト・フレイとマイケル・A・オズボーンの2人の研究社が労働の推計について行ったものを定義している。彼ら2人が推計したものは第四次産業革命の波により労働の在り方に大きな変化をもたらす衝撃的なものだったという。しかしその推計について真っ向から批判をしながらも、労働の在り方の変化についてチャレンジをしたのがドイツであるのだという。
第3章「雇用の質・構造の変化こそ問題―世界の最先端研究が示唆するもの」
雇用の未来については本章までで、ドイツ・イギリスといった研究を取り上げたのだが、2カ国に限らずとも、アメリカ・日本などの国々において雇用にまつわる研究が行われている。その研究において、雇用はどのように変化するのか、そこには「質」や「構造」の在り方が変わってくると言う。
第4章「日本の雇用はどう変わるか―日本企業の実態」
では、日本企業は雇用の変化に対してどのように対応していくのか、本章では事例やアンケートを元に取り上げられているのだが、雇用の増減といた悲喜的な面もあれば、AIやIoT技術と人間的技術の融合を行うと言った試みをチャレンジしている企業も見られた。
第5章「世界的な人材育成競争の始まり」
日本でもAIやIoTの中でイニシアチブを取ることができる人材の育成を行っているのだが、それは日本に限らず世界中で競争の如く育成が続けられている。ドイツや米国では既に大学等において教育の一環として行われるケースも存在している。
第6章「日本はグローバル競争にどう打ち勝つか」
技術革新に伴い、生産性も伸ばすことができるかというと、日本における労働生産性は世界的に見ても低い位置にいる。そこにはグローバル競争にて取り残される現状もあれば、日本の企業体系・労働体系そのものの問題もある。
冒頭でも述べたようにAIやIoTがますます実用化されたこともあり、労働の変化は起こっている。しかし労働や雇用の変化はなにもそれらが原因ではなく、技術そのものの革新によって「変化」は必ず起こるものである。その「変化」に対し、国・企業・個人それぞれでどのように対応すべきか、考える必要がある。そのことを思い起こさせる一冊であった。
コメント