英語と日本軍 知られざる外国語教育史

英語教育は今でこそ小学校でも行われるようになったのだが、戦前の頃も学校教育の中で英語教育は存在していた。特に陸海軍については諸外国との戦争や交渉などもあってか、外国語教育は必ずといってもいいほど行われていた。その外国語教育の創設から戦争、そして戦後に至るまでの外国語教育の在り方について、日本軍の歴史と共に追っているのが本書である。

第一章「近代陸海軍の創設と外国語」
軍にとっての外国語教育は現地でのやりとりや交渉で必要なことは冒頭でも書いたのだが、それは日本のみならずアメリカなどの外国でも通じていることである。そもそも外国に関する国防の概念が生まれたのは1790年代の時にロシア・イギリス船の侵入の時からであり、海に面した藩では「海防」として構築されたことが始まりとされている。この頃は英語教育と言った概念がなかったのだが、幕末になってからは黒船来襲に伴い、ジョン万次郎(中浜万次郎)が通訳として活躍し、その後教師としても活躍をした。そこで初めて英語教育が行われたのだが、鎖国の時代から交易のあったオランダを通じて外国語教育が行われた。オランダ語のみならず、英語もまたオランダによってもたらされた。

第二章「日本軍の外国語教育はどう変遷したか」
やがて明治時代に移ると「富国強兵」をスローガンに武力の強化が行われるようになった。と同時に欧米列強に対抗するためには「語学力」を鍛えることもまた政府要人の中で痛感することがあったことから英語教育も軍教育の中で力を入れることとなった。

第三章「アジア・太平洋戦争期の英語教育」
軍における英語などの外国語教育は昭和になってから、さらには大東亜戦争(太平洋戦争)の時も続いていた。しかし大東亜戦争前に至るまでのプロセスの中で英語教育自体に割く時間は少なくなっていった。とはいえ少なくなっていったのはあくまで陸軍であり、海軍はと言うと、当時の海軍兵学校長であった井上成美によって英語教育の時間は減らされず確保された。

第四章「戦後日本の再建と英語」
戦後になってからも英語教育が行われ、元軍人の中にも英語教育を行う人もいた。特に先述の井上成美は横須賀で私塾を開き、子どもたちに英語を教えたことは有名である。戦後は経済面で先進国の一国となったのだが、グローバル競争に伴い英語教育は他国と比べても劣っているのが現状としてある。

英語教育自体の歴史を紐解いていくと、幕末からのイメージが強かったのだが、元々鎖国されていた頃の江戸時代から英語教育があったことは初めて知った。とはいえ英語に限らずとも外国語教育そのものも江戸時代において独自の文化の糧となったことは言うまでもないのだが、そこには英語を含めた外国語教育の重要性が良く分かる。