四季彩のサロメまたは背徳の省察

とある高校の朗読部において、後輩から頼まれた女性の話について相談を受けたのだが、その女性は存在するはずのない女性であり、それが引き金となって事件が起こるというミステリー作品である。

女性関係の拗れと言うことはミステリー作品にてよくあるのだが、本書はミステリアスな人間関係であると同時に、実在する女性との関係もあることから官能的なタッチもある。

もっとも「サロメ」というとリヒャルト・シュトラウスによってつくられたオペラ(楽劇)を私は連想してしまうのだが、その「サロメ」もまた官能的な表現もあれば、グロテスクな事件も出てくる。本書はグロテスクこそはないものの、それに近い残酷な事件を描いており、高校生たちの関係でありながら、らしからぬ大人な関係ぶりが目立つ。青春系ミステリーでありながらも、それらしからぬ官能と幻想が入り交じった印象だった。