奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの

かつて、北海道札幌市に「くすみ書房」という本屋があった。もったいないことに私自身1度も行ったことがなかった。もっと言うと存在自体本書に出会うまで知らなかった。そのことを後悔してもしきれないほどである。

もともと「くすみ書房」は札幌市の琴似・大谷地と構えており、経営危機に陥った頃からユニークな試みを行い、マスコミでも取り上げられたほどであったという。独自の試みを行い、一時的に回復したが、2015年に閉店することとなった。そして再開の道を模索したのだが、くすみ書房の社長だった著者は2017年8月にこの世を去った。本書は一周忌をもって出版した一冊である。

本書は大きく分けて著者の手記と長年親交のあった中島岳志の解説などが盛り込まれているが、独自の試みについてのアイデアが生まれた根源、そして書店への思い、「奇跡の本屋」としての思いなどがぎっしりと詰まっていた。特に今となっては当たり前にある「ブックカフェ」もおそらく初めて取り入れたのはくすみ書房と言っても過言ではないほどであり、なおかつ売れない本を掘り起こすフェアもはじめて試みたと言われている。

読めば読むほど、本屋の可能性が見えてきたのと同時に、元々北海道に住んでいた(もっと言うと大学生から社会人になりたての時には札幌に短期間であるが住み、そうでなくとも遊びに行くことも多々あった)時には「くすみ書房」の存在を知らなかった自分を悔いてしまう。

「もっと早く見つけていれば・・・」という思いがあり、なおかつもし自分がくすみ書房を訪れていたらどうなっていたのだろうかという思いを持ってしまった一冊であった。

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