「テレ東」ことテレビ東京は全国キー局の中でも異彩を放つテレビ局である。番組編成も独特であり、緊急時についてもほとんど緊急放送を行わない。そのことから「安定のテレ東」「テレ東伝説」とまで呼ばれた。
しかしながら主要キー局と比べて規模は小さいのは否めない。否めないながら独自の番組をつくり上げ、一定の人気を得たことは言うまでもない。その番組誕生までの裏側を制作者の立場で綴ったのが本書である。
第1章「「番組を立ち上げる」ということ」
本章では主に「ガイアの夜明け」の誕生について取り上げている。もっとも「ガイアの夜明け」が誕生したのは社運がかかっているほどの大がかりなものであり、激しい議論が繰り広げられた。もっとも「ガイアの夜明けができるまで」を「ガイアの夜明け」で放送したら良いのでは無いかと考えるほど濃密なプロセスだった。
第2章「逆境のテレ東・報道局」
テレビ東京は主要キー局のなかでも立場が弱く、記者クラブのヒエラルキーとして下に扱われ、記者会見にすら立ち入ることできないこともあったほどである。そんな立場から「視聴者目線」でつくり上げられたのが「池上無双」と呼ばれるような選挙番組である。
第3章「アイデアは、どこにでも転がる」
本章ではガイアの夜明けの中で当時(現在もそうだが)センセーショナルだった「北朝鮮潜入」の番組を作るまでのエピソードが取り上げられている。当時からも潜入自体が大きなリスクだったのだが、テレ東の強みである経済的な観点で潜入するということまでやったという。さらには中国の農村に関するエピソードまで収録されている。
第4章「あえて不得意に挑戦すると、いいことがある」
そもそも「ガイアの夜明け」に限らず、テレ東の強みは「経済」にある。そのため軍事などの分野では「門外漢」と呼ばれるほど不得意であったのだが、ガイアの夜明けの中ではあえて軍事の分野に挑戦することも行ったという。
第5章「なぜ番組はスランプになったのか」
番組を長らくやっていると、変化にさらされ、視聴率が伸びず、スランプに陥ることも往々にしてある。その流れの中で変化が求められるが、対応しきれずに終了する番組も数多くある。その逆境の中でスランプになった原因と脱した要因とは何かを取り上げているのが本章である。
第6章「新番組CP、さあどうする!?」
著者は「ガイアの夜明け」の製作に関わっていたが、新たに2011年、「未来世紀ジパング」の番組のCP(チーフ・ディレクター)に就任することとなった。MCの選定から製作に至るまで、さらには苦難までも余すところなく綴っている。
第7章「池上彰さんの伝える力、村上龍さんの想像力」
著者が関わってきた番組の中で特に印象に残っている人物を2人取り上げているのだが、2人が持っていることと、著者が番組製作の中で2人と関わってきた中で思ったことを述べている。
第8章「「リンゴの裏側」をどう伝えるのか」
リンゴの裏は分からないことがある。それは表立ったことの真実を探ろうとしてもなかなか分からないことがあると一緒であり、それを「リンゴの裏側」として捉えることもある。その裏側をいかにして「伝える」のか、番組製作の取材の中で明かしている。
私自身ここ最近テレビは見ないのだが、テレ東の独自性はニュースなどでよく聞く。たまにテレビを見た中でテレ東では安定感もあれば、今まで観たことのないような面白さ・独特さの番組が数多くある。主要キー局の中でも小さいながらの強い存在感を持つテレ東。その強さの秘密が本書で明らかになったと言える。
コメント