モノから見たアイヌ文化史

私自身、北海道出身であることからアイヌ語やアイヌ文化には些か興味がある。もっともアイヌ文化についてはある程度知識はあったのだが、それを広く世に伝えたというと、過去に2度アニメ化されたマンガ「ゴールデンカムイ」がよい例である。

本書はアイヌの文化を「モノ」の観点から取り上げている。

Ⅰ.「日本史とアイヌ史」
日本の歴史の中にアイヌ民族は切っても切れない関係となっている。その関係はどのようなものだったのか、歴史とともに紐解いているのだが、実際には北海道のイメージが持たれるかもしれない。ところがアイヌの歴史は東北にも関連付けられており、本章でも東北におけるアイヌ史も言及している。

Ⅱ.「アイヌ文化の形成」
アイヌ文化が形成づけられた時期は諸説あり、現時点ではっきりとした時期はわかっていない。とはいえ考古学的観点からだんだんわかり始めているという。アイヌ文化が成立する以前に「擦文文化」なるものが存在しており、7世紀後半ごろからあったという。

Ⅲ.「アイヌ文化を特徴づけるモノ」
アイヌ文化を象徴づける「モノ」には多種あり、タバコはもちろんのこと、動物の骨から作られたアクセサリー、衣服、狩猟の武器などが多数存在しており、歴史とともに、どのようなモノが作られたのかを取り上げている。

Ⅳ.「アイヌ文化の変容」
アイヌ文化の変化は「戦い」から生まれたともいえる。戦国時代には「コシャマインの戦い」、江戸時代には「シャクシャインの戦い」「クナシリ・メナシの戦い」などがあった。他にも奈良時代にあったアテルイの反乱などもあり、日本の歴史の中で語り継がれている戦いであった。アイヌ民族から見ると「内地からの侵攻や侵略」というイメージが持たれる。

アイヌ文化は本州などの内地に比べて異質に見えるかもしれない。しかしながらアイヌ文化は私はもちろんのこと、北海道の中に深く根付いており、なおかつ日本の中にも含まれている。その片鱗を知ることができる一冊が本書である。