物流危機は終わらない――暮らしを支える労働のゆくえ

「物流危機」と言うと私たちの生活に密着しないのではと連想しがちであるのだが、じっさいには密着する部分が強い。もっともものを送る、あるいは受け取る際に重要な役割を担うのがヤマトや佐川などの運送会社であるのだが、ここ最近、送料にまつわるコストはもちろんのこと、ドライバーの枯渇などがニュースとして上がっているケースがある。その物流にまつわる危機はどこから起き、解決点はどこにあるのか、そのことについて取り上げているのが本書である。

第1章「宅配が止まる?ーヤマト・ショックから考える」
宅配はもはや私たちの生活にはなくてはならないものである。特にネット通販やメルカリなどのネットフリマも出てきたときに、宅配会社の需要は高まっていることは周知の事実である。その一方でドライバーや運送会社の負担は強いられる一方である。その「負担」は金銭はもちろんのこと、労働時間もある。

第2章「休めない、支払われない、守られないートラックドライバーの現実」
とりわけドライバーの負担がここ最近多くなっている現状にある。最も日本経済における物理的な流れの9割を担っているところであるのだが、他にも労働面での法の「抜け穴」がドライバーたちを蝕んでいる。

第3章「悩む物流ーなぜこんなに安く荷物が届くのか」
私自身もインターネットで買い物をする事がよくある。買い物をして行く中で「送料無料」と言う言葉が出るとどうしても買いたくなるのだが、ここ最近は控えており、送料が別途かかるものをよく購入する。その理由としてはドライバーたちへの賃金の低下が挙げられる。送料無料など送料を安くなっているのだが、その代償はドライバーたちが受けている現状がある。

第4章「経済のインフラを維持できるかー持続可能性の危機」
最も物流などの配送もまた「インフラ」の一部である。しかしながら物流とはいってもキチンとした賃金の支払いや人材の確保がならなければ意味がない。そのインフラの維持について本章ではある「危機感」を示している。

第5章「物流危機が問いかけるもの」
もっとも物流を行うにも法律があり、「貨物自動車運送事業法」と「貨物運送取扱事業法」である。いずれも1990年12月に施行された法律であるのだが、それ以前には物流の参入自体が困難とされていた。その後本法律によって規制緩和されて供給過多となり、運賃の値下げを行うことで生き残りを賭けたのだが、それが大きな歪みとなり「適正」の在り方が揺らいだことによって今の状況になっているという。

私たちの生活のなかで配送などの物流は切っても切れないものである。しかしながらその物流はより「便利かつお手頃」になってきているのだが、その代償は会社、ひいてはドライバーたちが受ける。便利の代償は誰にあるのか、本書は物流の話であったのだが、他にもこういった歪みは起こっているのかもしれない、そう考えてしまう一冊であった。

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