二軍監督の仕事 育てるためなら負けてもいい

2020年シーズンからヤクルトの一軍監督として本書の著者が就任することとなった。現役時代はクローザー投手として名を馳せ、幾度のヤクルト優勝・日本一に貢献した。その後メジャーから韓国、台湾と日本人として初めて渡り歩いた2012年に現役引退。その後は解説者として勤めた後に、2014年には古巣・ヤクルトの一軍コーチに、そして2017年には二軍監督に就任した。

本書はその二軍監督時代においてのエピソードを中心に取り上げている。

第1章「育てるー育成には、プランが大切だと改めて知った」
そもそも「二軍監督」の醍醐味とは何か。著者に言わせると「育てる」ことにあるという。もっとも著者自身は学校を卒業してドラフト会議で入団した若い選手たちをどのように育てるか、育成プランを練り上げ、一軍として活躍できる選手に成長させると言う役割が面白いと感じたからであるという。もちろん一軍から二軍落ちになった選手もおり、どのようにして一軍に戻せるようにすべきかの育成プランを練ることもまた仕事の一つであるという。

第2章「モチベーションを高めるために必要なこと」
冒頭にも述べたように14年~16年の3年間は一軍投手コーチであった。そのため一軍選手と二軍選手の違い、そして彼らとの接し方はどうあるべきか、どうモチベーションを高めていけば良いのかが異なってくる。そのモチベーションは勝つため・活躍するためののハングリー精神の身につけ方はもちろんのこと、一軍・二軍のギャップをいかに埋めるのかもカギになってくると言う。

第3章「育てる組織」
著者に言わせると二軍は本書のタイトルの如く「育てる組織」であるという。組織作りはもちろんのこと、選手をどう育てていくのかを考え、実行することに重点を置いている。

第4章「コミュニケーションが円滑な組織を生む」
著者が二軍監督として大切な要素の一つとして「コミュニケーション」である。これは選手はもちろんのこと、コーチ陣とやりとりをすることによって野球観を醸成するだけでなく、選手をいかにして育てていくべきかをつくり上げるきっかけにもなるのだという。

第5章「監督になって知る野球の奥深さ」
選手の立場から国内外、さらには独立リーグにも携わり、その後解説者としていったん離れた位置にいた後、コーチ・監督として現場を見るようになったのだが、そこでしか知ることのできない野球の「奥深さ」を知ることができたという。もっとも二軍監督の時にはなおさらそうなったとあり、選手の育て方はもちろんのこと、二軍にも試合があり、采配も大事になってくる。

第6章「僕が学んだ監督たち」
著者はおそらく監督に恵まれていたのかもしれない。著者が投手としての全盛期となったヤクルトの時には野村克也や若松勉、メジャーにおけるホワイトソックス時代にはオジー・ギーエンなど学ぶべき監督が多くいたことで、二軍監督になってからの素養にもつながった。

第7章「二軍珍事件簿」
二軍には一軍の場所では考えられないような「事件」「エピソード」がある。本章で取り上げている事件はその一部とみられるのだが、「嘘?」と首をかしげるようなものばかりである。しかしながら二軍は「育てる」場であるからでこそ、起こりうるのだという。また本章では来年ヤクルトの二軍監督を務め、現役時代は「ブンブン丸」と言われた池山隆寛とのエピソードも取り上げている。

一軍投手コーチを3年、二軍監督を3年を経て来年一軍の監督に就任する。今シーズンは球団ワーストタイの16連敗と波に乗れずリーグ最下位に終わってしまった。来季はチームの立て直しに向けて奔走することが予想されるのだが、高津臣吾一軍新監督の采配はどうなるのか、楽しみと言える。

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