日銀バブルが日本を蝕む

リーマン・ショックが発生してから経済が急速に落ち、その後「二番底」と呼ばれる不況に陥った。安倍晋三が首相に再登板をしてからは「アベノミクス」と呼ばれる好景気になった。その時代から不動産投資や仮想通貨なるものが隆盛した。その隆盛に伴い、経済的には回復していると言えるが、実感としては2000年代にあった好景気に似通っている。そう実感を持つことができないのである。

またこの好景気は「日銀」主導で行われたバブルであるとしている。そもそもなぜそのようなバブルが生まれ、そしてその代償はどのようなものなのか、本書は日銀バブルの本性を追っている。

第一章「不動産バブル崩壊の予兆」
今回のバブルは「不動産バブル」や「国債バブル」、「仮想通貨バブル」と言ったものがあるとしている。本章では「不動産バブル」を取り上げており、住宅ローンや、不動産投資に関して、バブル崩壊する青地図を描いている。

第二章「「マイナス金利」と「国債バブル」の大罪」
日銀における好景気の中であったのが、異次元的な低金利化、さらには「マイナス金利」が存在しているという。そのバブルについてのリスクを指摘している。

第三章「虚構の2%」
日銀はかつて、

「前年より2%ずつ上がり続ける状態をつくり出すことが、何よりも大事」(p.84より)

と発言したことがある。しかしその2%の表現は虚構であり、なおかつお金の価値も同様に失われてしまうという。もっとも日銀の黒田総裁は2%と発言したのか、そしてその2%はなぜ「虚構」なのか、その論拠も示している。

第四章「日本株はなぜ高騰したのか?」
今日の平均株価は23000円台で推移している。もちろん日々刻々と変化しているわけだから上がる・下がると言ったことは日常茶飯事である。昨年~今年にかけては下落したり、回復したりといった調子だったが、アベノミクスが始まってからは毎年数千円の値上がりが起こっていた。2017年の時にはメディアにて30000円台に回復するのではという記事も出てきたほどである。その要因とは何かを追っている。

第五章「茶番だった「総括的な検証」」
安倍政権が発足し、物価上昇率の目標の2%を明示した後、様々な「緩和」を行ったが、経済は必ず踊り場にさしかかる。その中で2016年9月にある会合の中で「総括的な検証」を行ったのだという。本章ではその要旨をかいつまみながら批判をしている。

第六章「仮想通貨は「円」を越えるか?」
昨年か一昨年あたりに「仮想通貨」がブームを起こした。もちろんそのブームはネガティブな意味も含まれており、特にビットコインの不正流出事件もあれば、芸能人をまきこんだ騒動もあったほどである。その仮想通貨は根付いてきている一方で、日本にある「円」の通貨の価値はどう変わっていくのかを指摘している。

第七章「失敗の代償は我々に」
もっとも経済政策には成功もあれば失敗は存在する。完全な成功は存在しない。もっとも成功をするにしても、その代償を負うことだってある。その代償は誰が負うのかというと国民であるという。

経済はリーマン・ショックを境に急速な下り坂となり、なおかつ二番底で不況となったが、今は株価的には回復している。もちろんその回復に対して恩恵を受ける人もいれば、代償を食らう人もいることは確かである。では国民全てが代償を受けずに恩恵を受けられるかというと、正直言ってそんなものは存在しない。どんな経済政策にも「代償」は存在するのだから。