ラッコの家

淡々と流れる時のなかで、ラッコの親子が漂っている姿を連想してしまう。本書はとある高齢者の女性が自らの空想におびえながら、生きるという一冊である。

しかし、なぜラッコになったのかというのが面白く、冒頭に述べた意味ではなく、娘の名前をメールで書こうとしたら間違えて「ラッコ」と書いてしまったことによる。かねてから「カーチャン」と呼ばれるメールやLINEなどの爆笑集を連想してしまうような誤字である。

しかし親子の世代の他愛ない会話などで自分自身の長い人生を思い出しながら、終わりまで生きる姿は残り少ない人生を思いっきり生きようとする姿がそこにあり、なおかつ絶望と思われるような状況も笑い飛ばしてしまうほどの胆力を高齢者の主人公から映し出しているようでいてならなかった。