無実の君が裁かれる理由

「冤罪」と言うと様々であるのだが、数年、ケースによっては数十年経つ事例もあり、冤罪が認められることなく、失意のまま逝去したケースも少なくない。

冤罪はなぜ生まれるのか、その原理には証拠や記憶、自白などハッキリとしていないものでも証拠として上がってくる。それが事件の真相と扱われてしまい、やっていないにもかかわらず、犯人にされ、裁判では有罪にされるという。本書はミステリーであるのだが、まさに「冤罪」がいかにしてつくられたのかというメカニズムを物語と共に追っている。

とある大学生がストーカーの罪を着せられ、追い詰められたのだが、先輩の冤罪の研究から、自分自身の無実の罪を晴らし、真犯人を追っていくという物語であるのだが、その真相を追っていく内にさらなる事件が発生し、謎が謎を呼ぶようになる。本書は冒頭にも書いたように「なぜ『冤罪』が生まれるのか?」に着眼点を置いており、

「犯罪や冤罪にはいつ巻き込まれるかわからない。それは本人の注意と関係なく襲ってくる。だが不慮の事故や病魔と違い、事件に関わる人たちの手で食い止めることもできるのだ」(p.149)

という言葉に尽きる一冊と言える。