将軍家康の女影武者

様々な時代の中で愛する人・国のために闘う女性がおり、なおかつ創作でありながらも、それを描く作品も数多くある。本書は戦国から江戸時代初期にかけて活躍したある側室の女性を中心とした物語である。

その主人公は卯乃とあるが、史実では「英勝院」がこの人物にあたる。通称は「梶(八)」と呼ばれ、史料にも「梶」と呼ばれることが多々あった。また本書の表紙には戦の甲冑を着た女性の姿であるのだが、実際に関ヶ原の戦いや大坂の役(冬の陣・夏の陣とも)などでは男装をして家康と同行していた。

主人公の名前は完全に創作であるのだが、英勝院の活躍について史料や研究所を数多く参考文献として扱いながら物語として描ききっているところには読み応えもありつつ、戦国から江戸時代について大きく取り上げられている中で新しい切り口が描かれているため時代小説の中でも内容も含めて興味深かった。