自由貿易は私たちを幸せにするのか?

「自由貿易」はというと、ニュースなどのメディアでは頻繁に流れてくるのだが、あまりピンとこない方もいることだろう。もっとも自由貿易自体、ものの輸出・輸入に関わることであるため、私たちの生活に大きく関わってくることとなる。もともと「自由貿易」とは、

「国家が、外国貿易に制限を加えず、また保護・奨励をも行わないこと」「広辞苑 第七版」より)

とある。よくニュースで出てくる規制や関税をかけるといったことで押さえつけたり、あるいはものによっては海外に輸出することを禁止するなどの保護を行ったりするようなことを一切しないことを指しているのだが、果たしてそれが私たちの生活で幸せなことなのか、本書は賛否両方の側面から論じている。

第1章「人びとを幸せにする貿易協定を求めて」
元々自由貿易の背景には「TPP(Trans-Pacific Partnership、環太平洋パートナーシップ協定)交渉」などが挙げられる。国際間での輸出入の規制を緩和する、あるいは関税を免除するような動きを見せている一方で、自国生産の価値がなくなるといった声もあった。もっとも自由貿易の背景としては、国間での「貿易摩擦」が多少なりとも起こっていることが挙げられる。かつて日本でもアメリカに対して貿易摩擦を起こし、アメリカでは「ジャパン・バッシング」が行われたこともある。

第2章「自由貿易にNO!と言う欧米の市民社会」
実際にTPPは先進国が主導となり、途中まではアメリカも主導側に回っていたのだが、ドナルド・トランプが大統領就任直後にTPP離脱を行った。元々トランプは自由貿易とは反対の保護貿易主義だったことにある。もっとも自由貿易に反対する国は欧米でも存在しており、本章ではどのような国や民が表明しているのかを取り上げている。

第3章「途上国にとってのメガ経済連携協定」
経済や貿易などの連携協定は二~三国間などいくつかの国々の枠組みにて行われているが、TPPはそれを遥かに上回る11カ国が協定を結んだ。このことから「メガ経済連携協定」と言ってもおかしくないが、本章では他にも東アジアを中心としたRECP(東アジア地域包括的経済連携)も取り上げている。実はこのRECPは日本のメディアではあまり取り上げられていないと本章にて指摘している。

第4章「自由貿易で誰が得をし、誰が損をするのか」
自由貿易にかかわらず、ありとあらゆる事柄で損をする人もいれば、逆に得をする人もいる。本書で取り上げる「自由貿易」はいったい誰が得をし、誰が損をするのか、そのことについて取り上げている。

第5章「多国籍企業はどのように規制するのか」
多国籍企業は会社によって国の経済力を凌駕することがある。もっとも各国のGDPと企業の時価総額を比べてみると、国によっては、世界を代表する企業の時価総額に劣るようなところもちらほらあるという。もっとも多国籍企業をなぜ「規制」すべきかというと、その背景には「税金」が挙げられる。有名どころでは「パナマ文書」がある。

自由貿易は恩恵を受ける国もあれば、損を被る国がある。もっとも核心については本書ではなかなか見えなかったのだが、かねてからある貿易の歴史から見てみると、自ずと見えてくるのかもしれない。