さよならセキュリティ つながり、隔たる、しなやかなセキュリティの世界

インターネットが隆盛し、もはや当たり前のものとなっている存在になったのだが、その分「セキュリティ」が重要なものになってくる。とくにIoT(モノのインターネット化)が進んでいくにつれ、重要度がますます増してくる状況にある。

セキュリティというと、ウイルスバスターやカスペルスキーをはじめとしたセキュリティソフトもあれば、セキュリティを専門的に行う業者も少なくない。しかしいくらセキュリティを行ったとしても、使う人のリテラシーの欠如、あるいはセキュリティの編み目をかいくぐる攻撃などがあり、セキュリティに関する事件が後をたたない。本書はそのことを捉えつつ、そもそもセキュリティを取り巻く環境と人はどうあるべきかを説いているのが本書である。

1章「主体と客体_人と情報の関係性」
人と情報の関係性は密接なものであり、パソコンやインターネットが出てくる以前から情報は存在していた。その情報について相手に対してみだりに口を割らないというのもまたセキュリティの範疇である。もっともそのやりとりがインターネットやパソコンなどを通じて爆発的に多くなった。

2章「暗黙知と形式知_他人との情報の共有」
身につけたり、得たことを他人に共有することも生きていく上で大切であるが、その共有するにも取捨選択が必要である。本章のタイトルにある「暗黙知」と「形式知」がそれにあたる。

3章「人と機械_AIのセキュリティ」
AIもまたセキュリティ面のリスクがある。そのリスクとはいったい何か、それは人と機械の関係にも関わってくることとなる。

4章「現実と仮想_インターネットを漂う個人」
よく「リアル」と「ネット」といった表現があるのだが、使われ始めたのは2008年だと記憶している。現実と仮想における個人ばかりではなく、「通貨」といった経済的な側面も存在しており、両方の概念は個人に限られなくなった。

5章「権威と自由_分断するインターネット」
いわゆる「ネット世論」や「ネット論壇」といったものである。もっとも世論調査についても、ネットで行われることは珍しくもなく、なおかつ政治的な議論もネット上で行われるようになった。行動や思想などが自由闊達に行われるが、その存在を恐れるところもあるという。

6章「噂と真実_情報の確からしさ」
ニュースによっては誤報やフェイクニュースといった虚偽の情報が流れることはしばしばある。しかしその度合いが頻発化したのもまたインターネットに起因しているところもある。何かというと、インフルエンサーがデマの情報を流してしまうと、とたんにそれが真実であるかのように拡散されてしまうためである。

7章「内と外_境界」
セキュリティの概念の一つに「境界」というものがある。それは内と外の境界としての「壁」を表しており、その壁が頑丈で、攻撃を防ぐことができる。システム的にいうと「ファイヤーウォール」がそれにあたる。

8章「点と線_通信と暗号化」
セキュリティでよく知られているもので「暗号化」がある。これはその人たちでしか知らない情報を、回りから見ても分からないように伝える。会社でいうところの「社内用語」もそれに当たるのかもしれない。

9章「表層と深層_サイバー空間を巡る国家の思惑」
今日でもまたサイバー攻撃なるものが起きている。もっともそのサイバー攻撃は国家間で行われるというよりも、個人が機密情報を取得するために行われることがほとんどであり、しかも得た情報やコンピュータウイルスなどが闇ルートで出回るという。その「闇ルート」は俗に「ダークウェブ」と呼ばれている。

10章「有形と無形_お金の次の信用」
無形のお金というと、今では積極的に推進されている「キャッシュレス」がある。そのキャッシュレスについてもまたセキュリティがあるのだが、よく知られているのは「7pay」のことである。

11章「はやさと深さ_経済的発展からの脱却」
パソコンやインターネットが進んでいくにつれ、情報や経済のスピードがますます速まっていったが、同時に息切れを起こしてしまったと指摘している。

12章「心と身体_無意識のセキュリティ」
セキュリティでの対策としてあるのが、「生体認証」がある。指紋や顔情報などがあるのだが、その認証がセキュリティにおいて価値のあるものと認識されている一方で、もしも街中がセキュリティセンサーでがんじがらめになったらどうなるのかのシミュレーションも行っている。

今となってはセキュリティは重要なものであるのだが、そもそもセキュリティとは何か、そしてなぜ必要なのか、さらにはリスクは何があるのかを知ることができる良い一冊である。