ファンタジー小説であり、数学とアルゴリズムなどを学ぶことができる一冊である。もっともファンタジーと数学をコラボレーションさせること自体に面白さがあり、なおかつ面白いくらい理解ができるのだから、物語の深さと面白さが難しいことでもすんなりと理解する原動力となることを証明してくれる。
本書は入門書の位置づけのイメージも持たれるのだが、実際に取り上げられている題材は「素数」「フィボナッチ数列」「リュカ数列」「メルセンヌ素数」「完全数」「友愛数」「三角数」「フェルマーの小定理」「コラッツ予想」と数学の授業で学ぶものもあれば、数学を研究するための基礎として大学で学ぶものも含まれているため、難解なものまである。それを物語にするだけでもここまで理解できるようになっているところは作者の物語の作り込みが見事と言うほかない。
もっとも難しい題材をライトノベルやファンタジーにすることは今に始まったことではなく、今から11年前に出版された「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」にも通ずるところがある。もし数学のみならず科学など教養的なものを本書の様にノベライズするような本が出てきても良いのでは無いかということを期待も持ってしまう。
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