ルポ「8050問題」― 高齢親子“ひきこもり死”の現場から

2010年代以降でよく言われているのが「8050問題」。何を意味するのかというと恒例親子のことを表しており、親が80歳、子どもが50歳の様相を表している。引きこもりの高齢化について表しているのだが、背景は思っている以上に複雑であり、介護もあれば、それに関しての支援も受けづらく、孤立してしまう。現に親子揃って孤立死してしまう出来事も存在したほどである。

今の日本社会に根深い闇を残している「8050問題」の背景と現状、解決に向けての支援をどのように行うべきかを追っているのが本書である。

第1章「「8050問題」の背景」
もともと8050問題は今に始まったことではなく、「引きこもり」が社会問題化された1980年代以降、不登校という言葉が出てきて、さらには2000年代になってくるとニートをはじめとした引きこもりが出てきた。その時は若年層だけの問題かと思いきや、それが続いてしまい、高齢化したこと、さらには社会になじめずドロップアウトしてしまい、引きこもってしまい、高齢化したこともあるため、顕在化している背景もある。

第2章「歪められた「8050問題」」
元々この言葉を生み出したのはコミュニティ・ソーシャルワーカーの勝部麗子氏である。元々はそういった現状であることを知り、支えていこうと言うものだったのだが、2019年の5月末に起こった「川崎通り魔殺傷事件」をきっかけに本来の意味とは全く違う意味で広まることとなったと言う。かつて「草食(系)男子」が違った意味で広められるといったことと似ている部分があった。両方とも広めた経緯としてはメディアであるのだが、そのメディアが曲解・歪曲して広められているように思えてならない。

第3章「親が死んだら、どうするのか」
ずっと親子暮らしが続く、あるいは依存が続いてしまうことにより、親、もしくは子が亡くなると言ったことは必ず起こる。しかしそれを受け入れることができず、死亡したことを隠しながら暮らし続け、警察の介入で明るみに出て、逮捕されるといった事件も少なくないという。

第4章「子どもを隠す親たち」
今となってはSOSを出せる、受け入れる機関が続々と出てきているのだが、8050問題はそのSOSがなかなか出せないといった現状も根深い闇として存在している。もっとも親も親で子どもへの依存が強くなってしまい、子離れができないといったケースもあるのだが、子どもがいるにもかかわらず監禁して隠すといったケースも存在する。

第5章「支援は家族を救えるのか」
では、どのようにして支援を行っていくかが課題となってくる。その課題はSOSが出せないといった現状のみならず、SOSを受け入れる機関が年齢制限をかけてしまっている、あるいは支援をするにもあてがないといった現状、その支援を行おうにも、今の社会システムの壁によりうまく行かないといったケースまで存在する。それらのケースをもってどのようにして支援を通じて救うべきかを取り上げている。

第6章「生きているだけでいい居場所をつくる」
本来であればサポートを行い、社会で働けるまでをサポートするといった役割なのだが、そうではなく、「生きる」ためのサポートをしていくことで救われるのだという。もちろん就労まで行けば良いのだが、なかなか高齢のためうまく行かないこともある。そのためいかにして生きるために支えていけばよいのかを日々課題に直面しながら行っている現状がある。

8050問題は想像以上に根深い。まずは現状を理解することから始めることが大切だが、そこからどのようにして支えていくべきか、今までの引きこもりやニートとは大きく異なる「壁」がいくつもある現状もまた根深さを増長させているようにも本書にて見て取れる。