なぜ科学を学ぶのか

もしも私が子どもたちから「何で科学を勉強するの?」と聞かれる。その時私はどう答えるのかというと、少し答えに窮してしまうのだが、一つ言えるのは、「今ある便利を学ぶ」と答えるかもしれない。もっとも科学の進化や実用化によって、今の豊かさ・便利さを持っているからと答える。

では本当の意味で「科学を学ぶ」とはどのようなことなのか、本書は科学者の立場から論じている。

第1章「科学するってどんなこと?」
そもそも「科学」とは何か、調べてみると、

「1.観察や実験など経験的手続きにより実証されたデータを論理的・数理的処理によって一般化した法則的・体系的知識。また、個別の専門分野に分かれた学問の総称。物理学・化学・生物学などの自然科学が科学の典型であるとされるが、同様の方法によって研究される社会学・経済学・法学などの社会科学、心理学・言語学などの人間科学もある。
 2.狭義では自然科学と同義。」「広辞苑 第七版」より)

とある。とくに1.の所の意味が本書において強くあり、新しい概念や物質を生み出すイメージが持たれるのだが、あくまでこれは産物に過ぎない。変化に応じて仮説を立て、検証を行い、法則などを体系的にしていくプロセスそのものであるという。

第2章「科学でどんなことがわかってきたの?」
科学というと思考や研究の概念と言ったものかもしれないのだが、そのプロセスを通じて、森羅万象が次々と解明されている事実も存在する。またそれらを知ることにより、新しい技術や概念を生み出す種をつくる要因にもなった。

第3章「科学的な考え方とは?」
では科学的な考え方とはどのようなものなのか、もっとも思考となると偏見や固定観念が入ってきてしまうことがあるのだが、科学的思考はそれを一切排し、そこにある事実や結果をもとしてさらなる仮説を組み立てていき、それが正しいのかどうか検証を行うことの繰り返しである。そのためたいがいは「疑り深い」といった方が正しいかも知れない。

第4章「科学の二面性」
物事には「二面性」があり、それは科学においても例外ではない。その科学の中でどのうような「二面性」を持っているのか、本章では科学が発展したことによる良い面と悪い面の両方を取り上げている。

第5章「二種類の科学:単純系と複雑系」
科学の研究対象、あるいは要素として二種類が挙げられるという。本章のサブタイトルにもあるように「単純系」と「複雑系」であるのだが、その両方の要素は私たちの生活に密接に関わっているものがあるという。どのようなものかについても併せて取り上げている。

第6章「科学する君たちへ」
科学の研究をしたい方はもちろんのこと、学校の授業でこれから科学を勉強するような方々に対して、どのようにして科学と向き合って欲しいか、科学者の立場からメッセージを送っている。

学校の授業において「科学」に関わることだろう。しかしその科学はその授業の産物においては密接に関わりにくいにしても、思考の在り方はビジネスの世界でも活きてくる部分がある。科学を学び終えてから十数年経つのだが、その社会的な経験を通して分かってきたことである。だからでこそ科学は私たちとは関係ないと言う考えは、本書を通じて捨てておいた方が良い。