生きのびるマンション―<二つの老い>をこえて

マンションは戦後になって乱立しており、現在でも新しいマンションがつくられている。またマンションによっては老朽化に伴い取り壊される所もあれば、新しく建て替えたり、リフォームをしたりするような所も少なくない。

しかし取り壊す中には生き残れなかったマンションも存在しており、その要因とはいったいどこにあるのか、本書にて取り上げている。

第一章「何が「スラム」と「楽園」を分けるのか」
マンションの中でも「スラム」と呼ばれるような建物から、「楽園」と呼ばれる建物まで存在する。その要因としてはそこに住む店子はもちろんのこと、建物の「管理」をどうするか、そして建替などをどうするのか、といった枠組みの良し悪しによって分かれている。もちろん「楽園」と言うと専ら新築マンションのことを連想するのだが、そこでもすぐにスラムになってしまうところもある一方で、老朽化したマンションを楽園にしたケースも存在する。

第二章「大規模修繕の闇と光」
建物はずっと存在できるとは限らない。建造物にはそれぞれ「寿命」が存在しており、その寿命までにガタが来るなどの老朽化もある。その老朽化から建て替え、あるいはリフォーム、修繕を行うこともある。それを見越して管理組合などでは「修繕積立金」を充てることもあるのだが、その修繕を巡ってのトラブルも発生している。そのトラブルの現状と対策などについてを取り上げている。

第三章「欠陥マンション建て替えの功罪」
欠陥マンションから改善するために建替を行うという動きもあるのだが、そもそも欠陥マンションがなぜできたのかというと、1980年代にまで遡る。露見される前の1970年代にオイルショックが起こったことによる品不足により、資材の高騰により構造上の欠陥を生じ得ないような事態になってしまい、欠陥マンションや住宅が出てきた。それが露見されたのが10年後にあたる1980年代だった。
一見古いように見えるのだが、実は最近になっても新築・建て替え関わらず起こっており、本章ではその一例を取り上げている。

第四章「超高層の「不都合な真実」」
かつてはセレブの象徴の一つとしてあげられたタワーマンションだが、昨年の台風では負の側面が大きく露呈し、価値も暴落している。しかし本章で取り上げられている「不都合な真実」はそれだけでなく、インフラ、さらには教育、危機管理の面で大きなリスクをはらんでいることを指摘している。

第五章「コミュニティが資産価値を決める」
建物の資産価値は場所や周囲など多岐にわたる面で測られている。しかし本来の資産価値はその地域に住んでいる方々の「コミュニティ」なのではないかとある。

マンションは取り壊されるのもあれば、新たに建てられるところもある。一方で長らく続いているマンションもある。そこにはどのような道を辿っていったのか、マンションを巡る光と影が本書にあったと言える。