世界的な呼称としては「COVID-19(コビッド19)」と言う名称であるのだが、日本ではよく「新型コロナウイルス」と呼ばれている。2019年11月22日に、中国の武漢市において初めて検出され、世界的に広がり、「パンデミック」にまで発展した。日本でも全国的に発症が確認され、先日まで緊急事態宣言が発令され、最近解除されたものの、今もなお発症が見られ、なおかつ第二波が確認され、第三波も懸念されているため、まだまだ油断ができない事態になっている。
現在起こっている新型コロナウイルス感染拡大の背景とウイルスのメカニズム、そして現在行われているワクチン開発の現状について現在の状況をもとに取り上げているのが本書である。
第1章「新型コロナウイルスの感染拡大」
この新型コロナウイルスについてメディアでも明るみに出たのは今年の元日のこと。武漢市の感染拡大を受けて、中国政府が武漢市の海鮮市場を封鎖したというニュースが流れた。まだこのときの日本は「対岸の火事」の如くあたかも他人事のような状況だったが、その認識は月日を追うごとに他人事ではなくなり、ついに1月16日に初めて日本で感染者が出てきてしまい、全国的に広がったのは先のニュースの通りである。
ちなみにこの新型コロナウイルスの自然宿主(根本的な発生源とも言われている)はコウモリであり、今から17年ほど前に流行した「SARS」と同じである。
第2章「やさしいコロナウイルスのウイルス学」
前章の最後に自然宿主はコウモリでコロナウイルスとSARSは同じと言うことを書いたのだが、元々ICTV(International Committee on Taxonomy of Viruses・国際ウイルス分類委員会)が名付けた新型コロナウイルスは「SARS-CoV-2」と呼ばれSARS関連のウイルスとして命名している。ちなみに冒頭で述べた「COVID-19」はそのウイルスに関する感染症の名称である。もっとも「コロナウイルス」とひとえに言っても、人だけが感染するとは限らず、イヌやブタ、さらにはネコも感染する。しかもそれぞれで感染するコロナウイルスにも種類があるのだという。
第3章「新型コロナウイルスの変異と進化」
新型コロナウイルスにもいきなり新種のように出てきたものではなく、ルーツがある。ではそのルーツとはいったいどこにあるのか、本章ではその「祖先」と進化、そして変異について取り上げている。本章におけるルーツの話は人類はおろか、生物の祖先にまで遡っている。
第4章「SARSとMERSから新型コロナウイルスの真実を探る」
新型コロナウイルスのルーツとして挙げられるのが先述した「SARS」と2012年に発生し、今も終息していない「MERS(マーズ)」がある。2つのウイルスとともに、新型コロナウイルスの真実を本章にて追っている。
第5章「新型コロナウイルスの検査」
現在行われている検査方法としては「PCR(Polymerase Chain Reaction・ポリメラーゼ連鎖反応)検査」が一般的に行われている。この検査法に関する報道も連日のように行われ、全国民にやるべき、あるいは全国民にやっても正確な感染者数はわからないという議論が成されている。ちなみに本著の著者は後者であるが、その根拠についても本書にて取り上げている。
第6章「新型コロナウイルスをくい止める―防疫と免疫」
水際対策はしっかり行われている国とそうでない国とで大きく分かれる。日本でも水際対策は行われたものの、完全にブロックできたとは言えず、そのことにより感染拡大を招いたとも言われている。
ここ以上になると政治・国家といった話になってくるため、本章では国と言ったマクロ的な対策ではなく、「個人」にフォーカスを当てた防疫や免疫対策を取り上げている。
第7章「ワクチン開発」
現在新型コロナウイルスにおけるワクチン対策が国内外、さらには官民問わずに行われている。ではどのようにして、ワクチン開発が行われているのか、そのことについて取り上げている。
第8章「治療薬の開発」
現在日本で使われている治療薬は「レムデシビル」と呼ばれているものだが、この「レムデシビル」自体はエボラ出血熱において治療される薬だが、コロナウイルスの治療にも使えることがわかり5月から「特例承認制度」を用いて利用しているという。他にも治療薬候補は数多くあるのだが、その検証と、「レムデシビル」が治療薬として効果的であることを証明されるまでのプロセスを取り上げている。
第9章「新型コロナウイルスと経済活動」
コロナウイルスおける経済活動の影響について取り上げているが、本章で主軸となるのはマスク・消毒液・倒産・テレワークである。特に「経済」と言う面では倒産やテレワークが主軸となっており、その現状とこれからどうするかについては未だに議論が絶えない。
第10章「脅威を繰返さないために新型コロナウイルスから学ぶこと」
現在進行形で流行が続いている新型コロナウイルスを通して、個人・団体・国・世界と教訓を残している。世界的な脅威のなかで私たちは何を学び、そしてこれからの糧としていくのか、現時点で得られる教訓を取り上げている。
今年の初めに対岸の火事と呼ばれていた新型コロナウイルスはもはや誰にでも発症するものとなり、なおかつ終息の目処は立っていない状況にある。諸説あるのだが、概ね終息するまでには1年以上かかる説もあれば、中には未来永劫終息しないという説まで存在する。脅威にさらされながら、変化を起こし、なおかつ応じる。おそらくウイルスへの対策はまさに「手探り」と言うほかない。
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