水害列島

梅雨の時期である。この時期になると雨が続き、所によっては災害級の豪雨になるケースもある。梅雨にまつわる豪雨の中で記憶に新しいのが一昨年の7月に西日本を中心とした「平成30年7月豪雨(以下:西日本豪雨)」がある。平成に入ってから豪雨による死者が初めて250人を超えるほどの水害だった。梅雨に限らず、それを過ぎる前後の時には台風がやってきて、風水害などを起こしており、昨年の2つの台風による被害は今もなお言えていない。

ほぼ毎年のように水害の起こる日本列島はどのようにして立ち向かえば良いのか、現状と対策を取り上げている。

第1章「なぜ大水害は起こるのか」
ここ最近は過去にない豪雨や台風に見舞われることもあり、多くの地域で甚大な被害をもたらすケースが多くなっている。ここ最近に限らず平成に入ってからも、またさらに遡って昭和以前でも台風や豪雨による被害も数多くあり、伊勢湾台風や室戸台風、枕崎台風などでは2000人以上の死者が出たほどである。そもそもなぜ日本で水害が出るのか、そこには日本ならではの土地、社会などに関係している。

第2章「西日本豪雨の教訓」
一昨年の西日本豪雨は大きな教訓をもたらした。そもそも水害が甚大な地域で「避難指示」が出たが犠牲者が出てしまった。もっともその避難指示が出たのは、場所によっては23時や1時台といった深夜の時間帯だったこともあった。他にも、

「自治体担当者が根拠を持って避難情報を発令したい気持ちはわかります。「避難指示」を出したのに何も起こらず、「なぜ非難させた。無駄なことをさせた。補償しろ!」と言われるようなことも過去にはあったからです」(p.34)

とあり、国民内での避難指示などの意識の浸透にも問題があった。また災害に関する防災情報のシステムにも問題があったことを認めており、昨年の3月に「大雨警戒レベル」がつくられるなどのきっかけにもなった。

第3章「防災という罠」
もともと災害をきっかけに防災情報も変えてきたのだが、気象庁の防災情報のシステムを見ても、かなり細々としたものとなっており、用語が多く、難しいモノになっていると著者は本章にて指摘している。

第4章「ゼロメートル地帯江戸川区のハザードマップ作り」
東京都江戸川区におけるハザードマップづくりについて取り上げている。この江戸川区は本章のタイトルにもある通り、海抜0メートルの低平地帯であることから、水害に見舞われやすいことが想定され、なおかつ避難所づくりなどの課題もあった野だという。

第5章「マニュアルの充実は防災力を脆弱にする」
マニュアルを充実することはあらゆる災害対策に対応を行うにあたり重要かもしれないのだが、そもそも「災害」自体、想定外の状況が起こりうるものである。マニュアルをガチガチに作ってしまうと融通が利くことができず、マニュアルから逸脱することができず、まごまごしてしまい、最悪死者を出すと言うようなことにもなりかねない。そう考えると、かつて「いのちを救う災害時医療」にて書評を行った際に、

「災害時の医療はジャズ演奏に似ている!」先述の本のp.149より)

と書いたのだが、これは災害医療のみならず、災害対策もまた同じ事が言え、突発的に答えられる幅を持たせる意味ではジャズ演奏の如く災害対策を行っていくことも必要と考える。

第6章「首都直下地震により発生する「地震洪水」」
今度は「地震」に関することであるが、2011年の東日本大震災の時にも東京では最大震度5強(首都圏では6弱になった地域も多い)を観測した。この影響により、東北にて甚大な被害を受けたのだが、首都圏でも津波、液状化現象なども起こった。今後本章のタイトルにある首都直下地震が起こったときに考えられるものとして、堤防や水門などが破壊されて洪水となる「地震洪水」が起こるとしている。

第7章「大水害にどう立ち向かえばいいのか?」
では大水害に対してどのように立ち向かっていけば良いのか、その根本的な対策としては何を行ったら良いのかを取り上げる必要がある。東京における水害対策と、2005年にアメリカにてあった「ハリケーン・カトリーナ」による被害と教訓を絡めて取り上げている。

第8章「見えない津波防潮堤を実現した女川町」
宮城県女川町は東日本大震災の際に大津波による被害を受けた。その対策として「津波防潮堤」がつくられたのだが、その津波防潮堤がつくられた経緯について取り上げている。

第9章「たゆまず続けられてきたゼロメートル地帯の「命山」」
東京の地域の一部では海抜0メートルとなる、低地の地帯があるため、気象の変化により、洪水が起こりやすいとされている。そのゼロメートル地帯の洪水対策として何が行われてきたのか、本章ではそのことについて取り上げている。

第10章「先人の知恵を学ぶ」
水害に限らず、ありとあらゆる災害の予兆を知る、あるいは対策を行う中で先人の知恵や伝承は大きな参考になることが多い。その先人の知恵をもとにどのような対策が行っているのかを取り上げている。

ここ毎年のように水害がおこっており、その度合いが高まってきている気がしてならない。今は梅雨の時期であるのだが、それが過ぎ、真夏になってからは今度は台風のシーズンを迎える。今年は新型コロナウイルスの影響も強くあり、水害があると、という考えがよぎるため、水害が起こらないことを願ってやまない。

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