あめつちのうた

「縁の下の力持ち」と呼ばれる存在は数多くあるのだが、その中でも野球界に脚光を浴びている所がある。本書で紹介する「阪神園芸株式会社」である。主に甲子園球場をはじめ兵庫・名古屋の球場や陸上競技場、さらにはテニスコートなどの施設や芝生の管理を行っている。

私自身もその会社を知ったのは3年前になる。2017年のセリーグ・クライマックスシリーズにおけるファーストステージの阪神 vs DeNA戦の時である。第3戦の時には雨天中止になるなど雨に泣かされてきた戦いだったのだが、特に第3戦の中止をはさんだ第2・第4戦に至るまでの試合を雨の泥のなか、支えた雄姿がインターネット上で広がりを見せたことにあった。

また今年も大きな活躍をしていた。それは春の選抜・夏の甲子園と新型コロナウイルスの影響により中止となり(その代わり春の選抜については代替として交流試合が開催される予定)、その中止に対して3年生の球児・マネージャーたちに「甲子園の土キーホルダー」を贈呈するための協力も行っている。

その整備の世界でも、そこでしか描けないドラマがある。本書は架空の人物が主人公であるのだが、「阪神園芸」に入社し、グラウンド整備を行うこととなった。しかし失敗続きの中で周囲との関わりを持ちながら、グラウンド整備を行い続けていった1年。野球だけでなく、フットボール(甲子園ボウル)などのスポーツにおける、まさに「裏側」のドラマがここにある。