文学こそ最高の教養である

よく「教養」と言う言葉を目にする。「教養」とは辞書で見てみると、

「1.おしえそだてること。
 2.社会人として必要な広い文化的な知識。また,それによって養われた品位。
 3.単なる知識ではなく,人間がその素質を精神的・全人的に開化・発展させるために,学び養われる学問や芸術など」「大辞林 第四版」より)

とある。解釈によっては1.にもなり、2.にもなり、3.にもなるため、一概に「これだ」と言うことは言えず、「人それぞれである」としか言い様がない。

教養の定義については、本書は教養に関しての議論をしているわけではないため、ここでは割愛するが、本書はどちらかというと2.の部分を意味しており、その根源的な教養を得るヒントとして「古典文学」と呼ばれる国内外の名著・文学作品に触れることを推奨している。しかし「文学作品」と言っても数多くあり、なおかつ難解なものも少なくない。文学作品に触れていない方であれば、どこから手をつけたらよいのかわからない。そこで本書である。本書はそれぞれの国の文学作品の選りすぐりの所を紹介しながら、文学作品のイロハを取り上げている。

Ⅰ.「フランス文学の扉」
フランス文学自体は中世から存在しているのだが、ルネサンスの時期から、現代に至るまで長きにわたって醸成された。また時代によってはバロック文学やロマン主義などつくられた時代によって傾向が異なってくる。本章では後にジャコモ・プッチーニによって歌劇かされた「マノン・レスコー」(ジュール・マスネも「マノン」と題して歌劇化している)や、20世紀最大の傑作として呼び声が高い「失われた時を求めて」などが挙げられる。

Ⅱ.「ドイツ文学の扉」
ドイツ文学もフランス文学と同じように中世から生まれ、現在に至る。国が近いだけに古典主義やロマン主義といった時代の流れによって傾向は変わるのだが、ドイツ文学の大きな特徴としてあるのが、文学でありながらも他の国の文学よりも哲学的な要素が求められることが非常に多い。具体的に読んでいくと非常に難解であるものの、感覚的に読んでいくことによって少しずつ理解していく。そしてさらに何度も読み進めていくとさらなる根源的な理解へと近づくような作品が多くある。本章では3作品だけであるが、いずれも代表する作品が取り上げられている。

Ⅲ.「英米文学の扉」
通称「英文学」と呼ばれるイギリス文学、そしてアメリカ文学の2つの文学を総称して「英米文学」と呼ばれる。よくある「小説」のはしりとなったのがイギリス文学であり、本章で紹介されているダニエル・デフォーの「ロビンソン・クルーソー」である。さらには小説の中でもよくあるSF小説の元祖の一つとしてあるオルダス・ハクスリーの「すばらしい新世界」(こちらは「ディストピア小説」とも呼ばれる)も紹介するなど、イギリス文学は今日の「小説」をつくり上げたと言っても過言ではない。アメリカ文学はどちらかというとイギリス文学から派生して生まれたと言えるが、生まれた後から独特なスタイルを生み出してきた。本章ではその中から「白鯨」で知られるハーマン・メルヴィルから2作品を取り上げている。

Ⅳ.「ロシア文学の扉」
ロシア文学もまた「小説」が盛んにあり、特に有名なところとしてはフョードル・ドストエフスキーが挙げられる。本章でもドストエフスキー作品の中から「賭博者」を紹介しているのだが、そもそもドストエフスキー自身が大のギャンブル狂であり、その借金返済のために多くの名作を残したとも言われている。他にもロシア文学となるとアレクサンドル・プーシキンといった戯曲を多く生んだ作家もいる。

Ⅴ.「日本文学·アフリカ文学·ギリシア哲学の扉」
最後は日本とアメリカ・ギリシアの文学について取り上げているのだが、いずれも他国の影響を受けているのだが、その度合いはドイツやイギリスといった国よりもずっと少なく、むしろ誕生した当初から独自の進化を遂げていったといった方が良い。その独自の進化を遂げてきた、文学について紹介している。

本を読む人であれば文学となると色々な傾向を知る、あるいは哲学も含めた森羅万象のことを考える際にうってつけとなるのだが、本にあまり触れない方だととっつきにくい部分が多くある。本書をきっかけに様々な文学を読んでみるのも手である。そしてそれが多くの文学に触れ、あらたな「教養」となっていくのだから。

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