平成論―「生きづらさ」の30年を考える

1989年1月8日から2019年4月30日までの約30年の間、「平成」と呼ばれる時代である。30年の間では特に経済や災害において「激動」の時代と呼ばれた。バブル崩壊から低成長時代に入り、回復しようとした矢先にリーマン・ショック、そしてアベノミクスによる回復といったこともあれば、阪神・淡路大震災や東日本大震災の自身による震災、雲仙普賢岳や御嶽山の噴火、次々と襲撃した台風などもあった。さらには多くの事件が起こるなどといったこともあれば、技術的な進歩などを享受したということもある。30年にも及ぶ「平成」の歴史はどのような意味合いを持っているのか、本書はそのことについて取り上げている。

第1章「世界のなかの平成日本」
世界の中で日本はどのようなポジションにいたのか、平成の時代においての変化を取り上げている。冷戦が終結し、平和な時代が入ったかと思いきや、アメリカとの諍いがあった。何かというと「貿易摩擦」における「ジャパン・バッシング」がある。そして1995年には日本はおろか世界的に震撼させたテロ事件「地下鉄サリン事件」が起こり、経済的にも1997年の金融危機、さらには先述のリーマン・ショックなどが起こった。

第2章「スピリチュアルからスピリチュアリティへ」
「宗教」と言うと、平成の時代には縁遠いように思えるのだが、実はこの平成時代においては新興宗教が続々と生まれていった。第1章で取り上げた「地下鉄サリン事件」は新興宗教である「オウム真理教」もその一つである。オウム真理教のあった前後には様々な新興宗教が存在していたが、オウム真理教の事件により、新興宗教へのネガティブイメージが増大したことにより一気に衰退した。その後新たに出てきたものが「スピリチュアル」である。このスピリチュアルは一般化され、さらに宗教用語として「スピリチュアリティ」なるものも生まれたという。

第3章「仏教は日本を救えるか」
宗教が栄える要因として「貧(貧困)」「病(病気)」「争(戦争)」がある。平成における日本では「争」は無縁だったが、特に縁深いものとして「貧」がある。これは低成長やリーマン・ショックにおける経済的な衰退により、「貧困」と言う言葉が乱舞するようになった。
本書はというと平成に入って「心の時代」に入ったことを指摘している。もっとも平成に入ったときに「うつ」や「精神疾患」などの精神的な病が出てきて、さらに増えてきていることがニュースでも取り上げられるほどだった。

第4章「平成ネオ・ナショナリズムを超えて」
「ナショナリズム」における考え方も平成に入って変化をしてきた。著者が指摘する中で特に顕著だったのが小林よしのり氏の「新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論」が「ナショナリズム」の変化を起こしたのだという。またメディアの「右傾化」や「ヘイトスピーチ」なるものも生まれ、「ナショナリズム」の概念に変化を来し「ネオ・ナショナリズム」になったと言う。

30年という歴史のなかで大きな変化があったことは否めない。しかしどのような変化があったのかと言うと、メディア・自然・文化・技術とありとあらゆる分野において変化が生じていることがよくわかる。しかしこの30年はどのような時代だったのか、一概には言えない。もっと言うと評価するにしても時間がかかるため、これから長い時間をかけて評価をしていく事も必要なのかもしれない。