生きることの社会学ー人生をたどる12章

「社会学」は、一見生活と縁遠いように見えて、実はかなり密着している。今日の社会現象と日常などを紐解く中でミクロ・マクロ問わずに紐解いている学問である。そもそも社会学は生きていく中でどのようにして密接に関わっているのか。本書は生まれたから死ぬまで、そして国家や社会そのものに至るまでの社会学を紐解いている。

第1章「社会とは何か」
そもそも「社会」とは何かについて根源的な所を紐解いている。辞書で見ると、

1.人間が集まって共同生活を営む際に、人々の関係の総体が一つの輪郭をもって現れる場合の、その集団。諸集団の総和から成る包括的複合体をもいう。自然的に発生したものと、利害・目的などに基づいて人為的に作られたものとがある。家族・村落・ギルド・教会・会社・政党・階級・国家などが主要な形態。
2.同類の仲間。
3.世の中。世間。家庭や学校に対して利害関心によって結びつく社会をいう。
4.社会科の略。「広辞苑 第七版」より

とある。特に1.の意味が今回では最も近い。本章では主に「二つの社会」と定義しており、自然発生した「共同体」としての社会と、人工発生した「システム」としての社会に分かれている。

第2章「出生をめぐる社会学」
人は男女の関係から生まれる。もちろん生まれたら父と母がおり(環境によっては片方しかいない、あるいは両方いないという人もいる)、その2人との間に子どもができて家族になるという自然的な現象と、日本においては生後2週間以内に「出生届」を提出必要があるが、届を提出することによって一市民になるというシステムとしての社会の参加というものがある。

第3章「家族の歴史社会学」
「家族」の在り方についても、自然的、あるいは人工的に行うと言った要素がある。よくある家族というと、書類等によっての家族の在り方もあれば、届けを提出せずにある種「事実婚」としての家族や夫婦関係を持つというのもある。

第4章「親子の心理・社会学」
「親子」の所にどのような「社会学」が秘められているのか、自然・人工の中で差があるのが「愛着」という心理的な側面がある。親子関係ではないものの、あたかも自然に育てられていくうちに「血縁関係ではないが、母親(父親)のように育てられた」というような側面も存在もあれば、戸籍上の親子だけと言うようなものもある。

第5章「学校と国家の政治社会学」
教育を受けるために学校に入学するというのもあれば、社会的に汲まれたカリキュラムの中で学び、働いていくことが寛容になってくる。もっとも「学校」にしても「国家」にしても、いずれも人工的につくられた社会(システム)であるのだが、そこにはどのような意味があるのかを取り上げている。

第6章「成長における幻想と文化」
幻想というと、小説やアニメ、マンガといった架空の物語を連想するのだが、本章はまさにその通りのことである。近年では日本のアニメ・マンガが海外でも認知されているように、サブカルチャー大国と呼ばれるまでになった。

第7章「攻撃性の社会学」
「攻撃」と言うと、すぐに連想するのが「暴力」である。どのような暴力かというと「戦争」というよりも、本章では「虐待」や「いじめ」といったものが挙げられている。

第8章「性愛と社会」
異性との恋愛、そして結婚に至るまでのプロセス、そしてその性などのことについてもっとも多感な時期にある「思春期」などの時期も踏まえて社会的にどのように変化していくのかも併せて取り上げている。

第9章「働くことと生きること」
「働く」意味は人それぞれであり、何のために「生きている」かもまた人それぞれである。そもそも社会的に「働く」「生きる」はどのような定義を持たれるのか、本章ではその定義について追っている。

第10章「老いゆく日々と社会」
人は誰しも「老いる」。その「老い」に対して社会的にどのような変化が求められるのか、そのことについて取り上げている。

第11章「死と社会」
「老い」と同じくして、人は誰しも死ぬ。その「死」に対しての弔いはもちろんのこと、死に対して、どのように扱うかも「社会」の在り方によって変わってくる。

第12章「これからの社会と私たち」
「社会」は絶えず変化する。その変化に対して私たちはどのように対応していけば良いのか、それは永遠の課題と言うほかない。また社会に対して、私たちがどのように変化を起こすべきかと言うことも考えていく必要があるのだが、たった1人では「微力」もしくは「無力」であることも認識しておく必要がある。

本書はある種「社会学」の入門書ともいえる。社会学において生きること、国家、さらにはシステムとは何かなどを考えて行くにあたり、どのような本を読めばよいのか、どのようなことを考えたら良いのか、12章の分野にて異なっていく中で、全てに対応している。そう考えるとこれから社会学を学びたい、研究したい方にとってはスタートラインとなる一冊と言える。

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