先に断っておきたいのだが、本書は「自殺マニュアル」ではない。必ず訪れる「死」に対して、どのような心構えを持つべきかを説いている一冊である。サブタイトルにもあるように、シニア世代をターゲットにしている一冊であるのだが、いつか死を迎えるにあたって考えるべき内容のため、どの年代でも読むべき一冊と言える。そもそも「死」とはいったい何か、そして人生における現在・過去・未来などの変化はどこにあるのかなど、様々な「問い」を投げかけている。
第1章「哲学の問い」
そもそも哲学とは何か、人間における生死はもちろんのこと、感情も含めて森羅万象がどのようなものかを紐解いている。しかしながら哲学と言っても、実証やロゴスなど、部門は多岐にわたる。
第2章「「無」というあり方」
そもそも「無」とは何か、これは哲学と言うよりも「宗教」の要素も入ってくる。しかしながら本書は「哲学」を主軸にしており、「無」に関する命題と論理を取り上げている。
第3章「過去・未来は「ある」のか?」
ある種の「時間」と呼ばれるものであるのだが、過去と未来はどこにあるのだろうか、現在を主軸にして、過去・未来はあるのかに存在するのかについて論じている。
第4章「〈いま〉は「ある」のか?」
本章ではサルトルの「嘔吐」をもとにして、時間論における「現在」について取り上げてる。この「現在」に関する議論はサルトルに限らず、多くの哲学者について論じられているのだが、本章ではあくまで「現在」ではなく<いま>として論じており、両者の違いについても論じている。
第5章「自由は「ある」のか?」
そもそも「自由」とはどこにあるのだろうか。そこの所から取り上げていく必要がある。その題材としてはカントの「アンチノミー(二律背反)」が挙げられている。
第6章「私は「ある」のか?」
哲学において重要な命題の一つにあるのが「私」についての議論である。人格と言うよりもむしろ「意識」と言う面での議論になるが、デカルト、ロック、カント、ヘーゲル、フッサールなど多くの哲学者によって取り上げており、どれだけ重要なものかがよくわかる。
第7章「死は「ある」のか?」
哲学上において「死」とはどのようなものなのか、果たして「死」は本当にあるのか、と言う議論から始める必要がある。そもそも「死後」の世界とはどのような世界なのかについても議論する必要があり、本章ではそれを取り上げている。
死と向き合う練習はある意味「終活」の一部としてある。ただ本書はあくまで哲学的な入門であるため、とっつきにくい部分がある。論理的に読み解くよりも、自分はどのような人間だったか、そしてどのように死を迎えるかと言うのを漠然とながら考えるための一冊として捉えた方が良い。
コメント