すべての愛しい幽霊たち

「幽霊」と言うと「怪談」を連想してしまうのだが、本書はそれとは大きく異なる。「幽霊」であるのだが、家族の「幽霊」であり、幽霊になってしまったことによる、家族に対する「喪失感」を描いている。

家族というと、家族模様それぞれ異なるのだが、多くは心の支えもあれば、大切な存在と言った意見もある。本書の主人公の一人に芸術家がいるのだが、既に年老いており、家族も失い、だんだんと孤独感を増していった。さらに他にも心臓移植手術を受けた学者が手術の最中でどのような夢を見たのかなどもある。

短編集であるのだが、出てくる幽霊はまさに「家族」そのものだったこと、そしてその家族に対して何をしてあげたかったのか、そして何を求めてきたのか、そのことについて考えさせられる一冊である。

日本の川柳に「親孝行 したいときには 親は無し」と言うものがある。本書を読んでいくと、まさにその言葉が如実に浮かんでいてならなかった。