元々著者は外務省の外交官で、特に対ロシア外交の主任分析官として活躍したが、2002年に背任と偽計業務妨害の罪で逮捕・拘留され、失職した前後に作家として活躍するようになった。執筆された当初はインテリジェンスや外交などの国家面での本が多かったのだが、今となっては、子育ても含めまさに「オールラウンド」にて著書を上梓するほどである。
本書の話に入る。著者自身の体験談をもとに、これからの働き方はどうなっていき、そして現在働いている人々はどうあるべきかを伝授している。
第1章「働き過ぎてはいけない」
かくいう私も「働き過ぎ」になったことはいくつかあった。今ではないのだが、かつて働くこと自体が楽しみであり、文字通り「寝食を忘れる」ほど働きづめになっていたこともあり、徹夜になったことも何度かあった。しかしそれがたたって体調を崩したこともあった。それ以来、適度に働き、休むことにしている(当たり前のことであるが)。そもそも労働とは何か、そして労働と資本について、カール・マルクスの「資本論」をもとにして取り上げている。
第2章「職業の選択を間違えてはいけない」
日本国憲法には「職業選択の自由(22条1項)」が定められている。とはいえ、職業選択ができるとは言えど、選び方によっては、自分自身の身を滅ぼしかねないことを著者は指摘している。というのは、昇進などがなく、一生搾取されてしまうと言ったことになりかねないとしている。
第3章「リスクは誰にでも襲いかかる」
「リスク」は誰にでもある。もっとも経営をしている方々もそうであるのだが、下で働いている「労働者」もまた然りである。しかも資本主義であることから、様々な「格差」が浮き彫りとなる。その浮き彫りとなる格差に対して対策を行っていくかを取り上げている。
第4章「会社を辞めてはいけない」
これまでの所で自分事のように思ってしまい、会社を辞めて別の仕事に就こうと思っている方々もいるかもしれない。本章では著者自身が、その傾向にある方々に対して辞めるのをやめろ、と引き留めている。
第5章「仕事だけしていたら孤独が待っている」
元々私自身が仕事人間「だった」。仕事をすることによって楽しさが持ってしまい、味を占めたことにより、ドンドンと働くことに対しての喜びに浸り、長時間働いてしまう。そしてそれが第1章にて言及した体調不良につながった。また、働き過ぎたことにより、かつて積極的に参加していた交流会の参加頻度も少なくなった。そのため人と関わることも極端に減ってしまい、孤独に陥ってしまう。もっと言うと女性と付き合う機会も少なくない、結婚も遅れる、あるいはできなくなるといったリスクも伴う。
第6章「仕事の目的は休むことだ」
仕事を行う目的について取り上げているが、本章のタイトルを見るとあべこべのように思えてならない。しかし仕事をしていくと、たいがいは休みの時間・日と言ったものがある。その休みを無駄にしないためにもよく働き、よく食べ、よく休む。そのことにより日頃の生活にメリハリを持つことができ、仕事における質の向上につながるという。
「働く」ことは自分のためにも、相手のためにもなる。しかし「過ぎたるは及ばざるがごとし」と言う諺のごとく、働き過ぎると、自身、さらには周囲に害を及ぼしかねない。「令和の時代だから」と言うのもあるのだが、今ある働き方を見直すには格好の一冊と言える。
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